風呂のない家なので、晩ごはんをすませた後、近所の銭湯にゆく。
とりわけこんな雪の晩は、銭湯の入口の明かりが神々しく見える。
こごえた体に、冬の銭湯の湯は、はじめ、ジーンとするほど熱いが、
やがてそれがアシッドハウスのノイズのように、ジュワワワワァ~と
しみてきて、体の力がぬけ、目が天国目になる。「生きててよかった」
と思う。湯気のたちのぼる湯船に手足をすっかりのばして、首まで
ゆっくりお湯につかる。体の芯までしっかり温まるので、家に帰るまで
ポカポカがつづく。そう、「ヒーローはいつだって君をがっかりさせる」
かもしれないが、「銭湯は期待を裏切らない」のだ。
東京都公衆浴場業生活衛生同業組合2003年版ポスター(画:横尾忠則)