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いる・こもんず 【普通名詞】 01| ありふれて変なもの 02| 扱いにこまる共有物 03| 分けても減らぬもの 04| 存在とは常に複数で他と共にあり、狂えば狂うほど調子がよくなる
はじめに、ふた、ありき

イルコモンズ編
見よ ぼくら
四人称複数
イルコモンズの旗
(Amazon.comで
大絶版廃刊中)
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▼文化人類学解放講座「人間とテクノロジー:原子力という怪物(その1)」


▼人類学者グレゴリー・ベイトソンの寓話:4倍体の馬のはなし

 「一九八〇年代後半、荷物運搬用の馬のDNAを遺伝子操作したエレホン国の偉大な遺伝学者P・U・ポシフ博士にノーベル賞が授与された。受賞の理由は、当時「新しい科学」として脚光を浴びていた「移送学」に多大な貢献をしたというものだった。なにはともあれ彼は、普通のクライデスデール種の馬の2倍のサイズの馬を「創造」(神の領域にふみこんでいったこの応用科学を語るのにこれほどふさわしい言葉はないだろう)することに成功したのである。

 体長も、背丈も、横幅も、すぺて2倍というこの馬は「4倍体」、つまり染色体の数が通常の4倍ある馬だった。ポシフ博士はいつもこう弁明していた。「仔馬のときはちゃんと4本の脚で立っていたのですが」。それはさぞかし見事な姿だったことだろうが、少なくとも近代文明の粋を集めた情報伝達装置に記録され、一般公開されたときには、あの馬は立てなくなっていた。体があまり重すぎたのである。なにしろふつうのクライデスデール種の8倍の体重があった。

 見物客や報道陣に見せるときには「ホースの水を止めてください」というのがポシフ博士の指令だった。哺乳動物としての正常な体温に保っておくために、普段は四六時中、体中に冷却水を流していたのだが、いまにも体の中心からステーキになっていくのではないかと、見ている方は気が気ではなかった。この哀れな馬は、皮膚と皮下脂肪との厚さが通常の二倍あった。これでは表面積が四倍あるといっても、まともには冷えてくれない。毎朝、この馬は、小さなクレーンの助けを借りて立ち上がり、車のついた箱の中に吊るされたバネにかけられる。バネは足にかかる体重が半分になるように調整されている。

 「この馬の知能は驚異的である」というのがポシフ博士の自慢であった。確かに脳の総重量は八倍あった。しかし、馬にとっての関心事以上の何かを考えている様子は見受けられなかった。なにしろ、命を保つことに追われてそれどころではなかった。

 体を冷やすためにも、八倍もの体に酸素を補給するためにも、いつもハァハァ喘いでいなけれぱならなかった。気管の断面積はふつうの四倍しかなかったからである。それから食生活が間題だった。毎日、ふつうの馬の八倍の量のエサを、四倍の広さの食道に押し込まなくてはならたい。血管も相対的に細くなっているから、血液循環の抵抗も増す。心臓も大きな負荷に耐えねばならない。

 聞くも哀れな馬の物語……

 この寓話が示しているのは、二つ以上の変数がちぐはぐに増減したらどんな結末が待っているかということである。四倍体の馬の不幸は、体長と表面積と体積とのバランスが崩れてしまったことにある。

 この種のケースで今日、最も有名なのは、原子爆弾中の核分裂物質のふるまいだろう。ウラニウムは天然に産出され、自然状態でも常に核分裂を続けているが、反応の連鎖が確立されないために爆発とはならない。各原子の崩壊時に放出される中性子が別の原子に当たって二次分裂を起こしても、ウラニウムの塊が臨界値より小さいときは、一回の分裂で出る中性子のうち、二次分裂を起こすものの数が平均一個以下であるために、連鎖はいずれ尻切れとなる。塊を大きくすれぼ、二次分裂を起こす中性子の割合も増加し、臨界点から先では、分裂プロセスが末広がりの累乗的増大を示し、爆発となる。」

(グレゴリー・ベイトソン「学校の生徒でもみんな知ってること」より)

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 さて、この寓話から教訓として学ぶことのできる「原子力の不幸」はなんだろう。

[関連]
▼「レヴェル7のもとでの文化人類学解放講座」
http://illcomm.exblog.jp/13370129/

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by illcommonz | 2011-04-14 20:45
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