こないだ紹介したマーシャル・サーリンズがプリッキー
パラダイム出版社の創設の経緯と"冊子出版(パンフ
レットパブリッシング)"という方法について、
クリエイテ
ィヴ・コモンズのインタビューに答えた記事があるので
補足して紹介します。サーリンズはいわゆるマルクス
主義人類学者で、主著のひとつである「石器時代の
経済学」は、J・ボードリヤールやルイス・ハイドなど
人類学以外のジャンルの書き手たちにも好んで引用
され、主義や分野を超えた知的インスピレーションの
豊かな「与え手」になっています。また構造主義の時代には「記号論」を積極的に
受け容れたほか、「歴史の島々」では人類学がそれまで苦手としてきた歴史研究に
道をひらいてみせました。また近作「今もなお、フーコーを待ちながら」はクリエイテ
ィヴ・ライセンスつきで公開されています。また、グレーバーの本でも紹介されていた
「本当に豊かな社会(The Original Affluent Society)」(←「石器時代の経済学」
の中でみんなが一番好きな章)は
「エコ・アクション」の
サイトで全文を読むことができます。このように、
サーリンズがいちはやくクリエイティヴ・コモンズに
目をつけ、出版という具体的な「活動」を通じてアク
ションを起こしたことは「西欧的価値観からの解放」と
その「実践の学」としての人類学の面目躍如たるもの
だといえ、またグレーバーの「アナーキスト人類学
のための断章」を出版した功績も大きいと思います。
クリエイティヴ・コモンズのインタヴューのおしまいに、
サーリンズは「こういうことができて、私はしあわせ
であり、また、誇りでもある」云ってますが、人類学
者になりそこねたイルコモンズとしても、こういう気のいい人類学者がいることを
うれしく感じ、また、ちょっとだけ誇りに思ってもいます。