二〇世紀の肥大化した音楽産業は、音楽を気前よく、ひとに分け与えるよろこびとしあわせをアーティストたちから奪ってきた。プリンスはそのプライマルなよろこびをとりもどそうとしたのだと思う。音楽は誰のものでもない、みんなのものである。音楽にとってのしあわせとは何か。それは金を生むことではないはずだ。音楽にとってのしあわせとは、時代や国や言語や貧富の差をこえて、世界中の多くの人びとに演奏され、歌われ、そして、聞かれることだと思う。本当に音楽を愛する人間なら、音楽家としての自分のしあわせだけでなく、この音楽にとってのしあわせも願うはずだ。プリンスは自分がつくった音楽が、世界を自由にかけめぐることを願って、
そうしたのだと思う。愛する音楽をビジネスの牢獄から解放してやろうとしたのだと思う。うそだと思うなら、「アラウンド・ザ・ワールド・イン・ア・デイ」のジャケットをみるといい。そこに描かれたプリンスはとてもしあわせそうにみえないか。もともとファンクという音楽はそういう音楽だったはずだ。それは人の魂を解放してゆくFREEな音楽だったはずだ。つまり、音楽が本来あるべきその原点にもどっただけのことだ。ところで、プリンスのかつてのバックバンドの名前をおぼえているだろうか?そう、プリンス&ザ・レヴォリューションである。このバンド名はダテではなかったのだ。