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いる・こもんず 【普通名詞】 01| ありふれて変なもの 02| 扱いにこまる共有物 03| 分けても減らぬもの 04| 存在とは常に複数で他と共にあり、狂えば狂うほど調子がよくなる
はじめに、ふた、ありき

イルコモンズ編
見よ ぼくら
四人称複数
イルコモンズの旗
(Amazon.comで
大絶版廃刊中)
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▼大学改革とさまよう知識人
d0017381_4345380.jpg「本センターが推進しようとしている「協働実践研究プログラム」はまさしく、これまで支配的であったこうした研究のあり方を根底から乗り越えて行くことをめざしている。それは、研究者の「専門分野」の論理に従ってテーマをぶつ切りにすることなく、また「研究」と「実践」を分離することもなく、各分野における第一線の専門家である研究者と実務者・実践者が共に参加し、各々の実績を踏まえながら協働して現実の課題に分野横断的に取り組み、その成果を実践の場に還元していくことだ。それはまた、自己の生き方に無反省なまま「知的」高みから社会を見下ろしつつ「現場」から収奪したデータをもとにひたすら「業績」なるものを積み上げることだけに腐心する「アカデミシャン像」を否定し、研究面で「社会に開かれた大学」をつくり上げていく試みでもある。その意味で「協働実践研究プログラム」は真の「大学改革」を研究の分野において推進していくまさに拠点として構想されているのである」。

勤め先の掲示板で見つけた、ある研究機関のパンフにこう書いてあった。骨のある良い文章だと思った。問題はこのプロジェクトが本当に「実践」されることだと思った。ちなみに、この手の文章でいちばん好きなのは、生前、サイードが書いた次の文章。これをよむと、ちょっと勇気がでる。そして知識人ならずとも「実践」したいものだと思い、イルコモンズ・トラベリング・アカデミーはそこからはじまった、といえば、できすぎた話みたいだけど、うそのようなほんとうの話。

d0017381_4502655.jpg
「知識人は、君主よりも旅人の声に
鋭敏に耳を傾け、慣習的なものよりも
一時的なあやういものに鋭敏に反応し、
上から権威づけられて与えられた現状よりも、
革新と実験のほうに心をひらく。
漂白の知識人が反応するのは、
果敢に試みること、変化を表象すること、
動きつづけること、決して立ちどまらない
ことなのである」

エドワード・W・サイード「知識人とは何か」
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by illcommonz | 2007-03-23 04:58
▼春の異動
d0017381_4161616.jpg「502」から「605」へ

こう書くと何だか新機種の携帯
電話への移行の話みたいですが、
「春の人事」の、「異動」の話です。
このたび予定通り、現職を失職し、
勤め先を変わることになりました。
勤務先と交渉した結果、新たに
一年間の就労契約を結ぶことで
合意に達しましたので、502号室
から605号室に移動しました。

残念ながら定職ではないので、辞令も昇格も役職も何もなしのただの「移動」です。
今日からまた一年後の「失職」に向けて、新たなカウントダウンライフのはじまりです。
ともあれ昨年より、失職後の身の処し方について、各方面の方々に多大なご心配を
おかけしましたが(特にこのブログを熱心に読んでるらしい両親)、時代の申し子たる
「プレカリアート」の一員として、これからまた一年間、清くもなければ、ただしくもなく、
そして美しくもなく、ただ貧しく愉快に多摩霊園のそばで仕事を続けてゆきますので、
どうぞあたたかく見守っていてください。それと、なんとか今年は、中央大学以外の
大学でも「非常勤講師」の職を見つけたいと思ってますので、心あたりのある方は、
どうかよろしくお願いします。なにしろよく働きます。それは先日の15時間講義
実証ずみだと思いますので、1時間目から6時間目までまとめてうけたまわります。
臨時講義、集中講義、特別講義と、「講義」とつくものなら何でもうけたまわります。
専門は「文化人類学/民族学」ですが、いろんな分野の評論の仕事もしてきたので、
二〇世紀の現代美術、現代音楽、現代建築、現代文学、現代映画、現代思想と、
現代とつくものなら、だいたいいけます。なかでも得意なのはグローバリゼーション
についての講義で、映像人類学もかなりいけます。もちろん無報酬のトラベリング・
アカデミーでも結構です。研究費も研究室も要りません、教室と教職を我らに。
以上、イルコモンズからの春の異動と求職のお知らせでした。
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by illcommonz | 2007-03-23 04:19
▼高円寺でまた騒ぎが
d0017381_2121367.jpg衝撃のビデオ「ドイツ無政府主義ポゴ党」の世界先行上映で幕をあけた素人の乱主催の「第一回弁士会」。通告通り、もうすぐその第二回目が開催されます。第一回のときの写真をみたら、何だか異様な盛りあがりだったみたいですね。(写真はここから無断で借用)。いまYouTubeみたら、3,000アクセスを超えてました。しかも伝え聞くところでは、あのビデオに感化されて「日本ポゴ党」が結成されたとか(念のため云っておきますがイルコモンズは入党しませんからね)。それはさておき、今回はイルコモンズの大好きな「ラジオ・マルーン」が登壇するそうです(いいぞ!)。イルコモンズもよばれたのですが、よく考えたら、たしかに「お金はないけど、ヒマ人ではない」し、仙台アカデミーもあるので、今回はトークのみで参加します。でも場合によっては、別のスピーチ映像を上映するかも。もうすぐ主催者から公式のアナウンスがあると思いますので、騒乱と熱狂の第一回目を見逃した方はぜひどうぞ。
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by illcommonz | 2007-03-23 02:31
▼好奇延長
d0017381_136437.jpg
タイヘンご好評いただいた「好奇字展」は、明日で終了ですが、
「もっと見せろ」という、ご要望におこたえし、会期を延長して、
新学期にもう一度、アンコール展示することになりました。
土・日開催もあります。開場時間も変更しますので、ぜひどうぞ。

d0017381_1425712.jpg
会場で上映している「甲骨アニメ」もWEBで見れるようになりました。
WEBサイトの「展示会場」のところからリンクしていますが、
ダイレクトリンクはこちらです。「好奇字グラフィティ」の追加展示も
始まりました。他にもいろいろやってます。今日は有線テレビ局が
取材に来たそうです。
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by illcommonz | 2007-03-23 01:36
▼イルコモンズ・トラベリング・アカデミー仙台
d0017381_1245587.jpg「イルコモンズ・トラベリング・アカデミー仙台」

07年4月2日(月) 20:00-23:00
宮城県仙台市青葉区一番町1-11-204F
PANGEA(パンゲア)
*スーパー中華レストラン天龍の4階

日時と場所は上記の通り。
あとはいつもの通りですが、もしかすると、
「抵抗食の会(仮)」と特別ゲスト
も来るかもしれませんはナシです。

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[追記] 南はアフリカまで行ったことあるけど、
北は水戸までしか行ったことないのでたのしみです。
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by illcommonz | 2007-03-23 01:31
▼オールナイト・アカデミーにつづいて
d0017381_6265785.jpgトラベリング・アカデミーやります。

福岡→大阪→京都→名古屋→東京と
北上してきたイルコモンズ・アカデミー、
今回は4月2日(月)に東北・宮城県で
開催します。時間と場所が確定したら
改めてお知らせします。

これとは別に、夏に北海道で開催する
話も進んでます。北海道まで行ったら、
Uターンして、また南にもどってきます。
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by illcommonz | 2007-03-20 06:31
▼「文化人類学解放講座」開講
d0017381_5464219.jpg
「文化人類学解放講座」を開講します。
時間割は水曜の4限(15:00-16:30)、
教室は3号館の300人教室(3114)です。
今年は大スクリーンのある大教室がとれた
ので、いつもよりたくさん映画をみます。
開講日は4月18日(水)です。
出席はとりません。

「文化人類学解放講座」ブログ
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by illcommonz | 2007-03-20 05:51
▼やってみたら、おもしろかった
d0017381_3255214.jpg「URBAN ART ACTIVISM 入門篇」
気に入らない雑誌を読み倒すの巻
3月18日(日)17:00ころからI.R.A.にて

街にあふれる、気に入らない雑誌を
みんなで読み、文句を言い合いましょう。
その後、雑誌の解体・再構成を行い、
再び、街にもどす予定です。
都市における抵抗の表現を創造する
プロセスをみんなで共有したいので、
いろんな雑誌をもってきてね。
ファッション、音楽、ビジネスなど、
雑誌以外もOK。

*はさみ、のりなど工作の準備があると
うれしいです。(同フライヤーより)

d0017381_327617.jpg【実験結果】
無料で配布される情報の
ほとんどすべてに値段が
あることがよくわかった。
そして、そこが気に入らない
のだということもわかった。
だから、そのことがみんな
にもわかるように、しるしを
つけて、街にそっともどして
あげた。


d0017381_3272660.jpg【実験結果】
ファッション誌一冊に掲載
されてる全商品の値段の
総額を計算してみた。
600頁のうち100頁分の
商品の値段を全部足して、
それに6をかけ、最後に
30%OFFにしてみたら、
びっくりする金額だった。
「女子であることは大変だ」
ということがよくわかった。


[追記] 気になる計算結果は、今年の「文化人類学解放講座」の講義のなかで、
お教えします。
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by illcommonz | 2007-03-20 04:02
▼計算機を片手に、雑誌を批評的によむ
d0017381_001624.jpg明日、18日(日)のIRAの店番は、
「抵抗食の会(仮)」のメンバーで、
パンクバンドTHE HAPPNING の
ベースのタケウチ君です。
明日はアーバン・カルチュラル・
アクトアップとして「要らない街の
無料情報誌」を回収し、批評的に
カットアップ&リミックスして、
もとあった場所に返すという
シチュアシオニスト的なワーク
ショップが開催されます。

おもしろそうなので、イルコモンズも参加します。イルコモンズはレコード当番をしながら、
以前、都内の某女子大で「日本の現代文化」の講義を担当してたときに「テキスト購読」
としてやった、女性むけファッション雑誌一冊に掲載されてる全商品の値段の総額を
計算してみるという、商品文化/雑誌の批評的読解を、もう一度やってみる予定です。

d0017381_047364.gif今回購読するテキストは、
小学館発行「CanCam」
2007年1月号
(創刊25周年記念号)
定価620円
総ページ数626頁

特集記事は「2007年CanCam
新星☆めちゃモテPLAN10」
「バカ売れコートX流行インナー
X最新ブーツ新方程式大発見」
「新星☆エビちゃん真冬の王道
スタイル」その盛りだくさんの
内容です。



6年前にティーンエイジャー向けのファッション雑誌を購読(計算)したときは、
たしか概算で8000万円くらいでしたが(講義の時間がたりなくて途中で断念)、
はたして今どきのファッション雑誌のお値段はいかに?ちなみに、これをやると、
いかに現代の女こどもが消費文化のみえない"情報爆弾"に日々さらされて
いるかが、よくわかります。参考までに、そのときの講義の推薦課題図書は、
岡崎京子の「PINK」でした。
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by illcommonz | 2007-03-18 00:49
▼スティル・マイ・ギター・ジェントリー・コーリング(前篇)
 話は去年にさかのぼる(そして今回はめずらしく長い話になる)。去年の暮れのこと、ふとした拍子で気鬱をこじらせ、神経を衰弱させた。ブログを休んでいた時期のことである。ほどなくして気鬱はおさまったが(今でもときどき再発するが)、時を同じくして、神経痛になった。「心身二元論」の立場からすると、神経衰弱と神経痛のあいだに因果関係はないが、「野生の思考」の立場からすると連合関係はある。そして、この神経痛には、ちゃんとした名前がある。「肩関節周囲炎」、俗称「四〇肩」というのがそれである。腕を上げたり下げたりすると肩に電気のようなパルシーな痛みが走る。まあ、そういう歳なのだから、別に文句はない。厄年なのだから、そのくらいのことはあるだろう。厄年というのは、そういうものだ。

 それに、別に肩のひとつやふたつ(幸い肩はふたつかしか)こわれても、デザインくらいできるし、映像だってつくれる。講義をするのにも支障はない(困るとすれば鉄棒で逆あがりをしてみせたり、インティファーダに参加するときくらいのもので、あまりそういう機会はない)。ただひとつ、大好きな太鼓がたたけなくなったり、ギターが弾けなくなるのは困る。ものすごく困る。

 そこで、ほかのことはさておき、太鼓を叩く筋肉と、ギターを弾く筋肉を維持するためにトレーニングをはじめることにした。といっても、なんのことはない、時間をみつけて、太鼓を叩き、ギターを弾くだけのことだ。やってみたら、太鼓は問題なく叩けることがわかった。よしよし。ところが意外にもギターの方が難儀だった。どうも具合がよくない。別にピート・タウンゼントのように腕をぶんぶんふりまわすとか(あれは「ウィンドミル奏法」という)、シド・ビシャスのようにベースで客の頭をぶんなぐったりするわけではなく(あれは演奏ではない)、はたまた、ジミ・ヘンドリックスのようにギターを頭の後ろまわして曲弾きするわけでもない(ためしにやってみたら激痛が走って涙と笑いが同時にでた)、どちらかといえば、デレク・ベイリーのように、足をぶらんぶらんさせながら椅子にすわって、勝手気ままに雑音を出すだけなのだが、どうにも腕がだるい。しかもストロークが億劫である、、、これが厄年というものなのか、おそるべし厄年である。

 そこで、これははまずい、と一念発起し、ギターをもういっぺん"ちゃんとやる"ことにした。ちゃんとやるというのは、ちゃんとしたギターをまず手にいれるということである。そして、ちゃんとしたギターというのは、ちゃんとネックとヘッドがあり、ボディがあり、そして弦が6本張ってあるギターのことである。というのも、いま家にあるギターは、ネックのないピックアップとボディだけの「首なしギター」だったり(これはアンプに近づけてフィードバックループさせ、ハウリングの悲鳴をあげさせるのに使う)、それとは反対に、ネックとピップアップしかない「胴なしギター」だったり(これはピックアップを弦にこすりつけてスライドさせて使う)するからで、実はくだんのスチールギターもベースの弦を張って使っていた。唯一、五体満足なのは、ガットギターだが、これは旅行用の小さいものである。それになにより、ギターといえば、やはりエレキ(ギター)である。トレーニングするなら断然エレキである。エレキをもって肩のエレキを制す、である、と心にそう決め、スチールギターを売って、エレキを買うことにした。

 なにせGuyatoneのスチールギターなのだから、よもや二足三文であるはずはないだろう。最低でも2万円くらいにはなるだろうと思い、弦を張り替え、プラグの掃除をし、長年の手垢や錆びをきれいにして風呂敷にギターを包んで、御茶ノ水の楽器街に向かった。以下はそのときの記録である。

d0017381_21573948.jpg
 まず、Guyatone とは何か?それは「音楽を通じて暮らしに潤いや豊かさをもたらす製品、明日の世界を担う若い人達の知的想像力を豊かに刺激する製品を企画し、新しい生活文化の創造を提案する為、優秀な技術と最良の製品を社会に送り出すことに、経営者も社員も一体となって情熱を傾けることのできる企業(以下省略)」というのは、同社の公式サイトにあるマニフェストにある文言で、Guyatone (愛称「グヤ」、以下「グヤ」と表記)といえば、テスコ(TEISCO)と並んで60年代から70年代にかけて国産エレキギターの黄金時代を築いた楽器メーカーであり、いわゆる「ビザール・ギター(*解説=基本設計は一流メーカーの有名機種をコピーしたものだが、コピーしたつもりがコピーしそこねて独特のルックスやテイスト、そしてオリジナルにはない不可解なサウンドや付加機能を備えもってしまった世にも好奇なギターの総称)」の老舗である。現在は海外ブランドや他の国産メーカーに押され、エフェクター類が同社の主力製品になっているが、かつてはエレキといえばグヤであり、グヤのつくるエレキはフェンダーをはじめとする外国製ギターのコピーでありながら、オリジナルとは似て非なるストレンジなプロダクトを次々と世に送り出してきた。そのへんは左の写真をみた方が話が早いと思う。つまりそういうことである→画像参照

 一見すると、フェンダーのジャガーのようだが、さにあらず、モズライトやリッケンバッカーのようにもみえるが、さにあらず、どれもコピーでありながらオリジナルとは似て非なるシュミラクルの逸(脱)品である。朱に交わりても赤くなるとは限らないシュミレーション、それがザ・グヤトーン・ビザール・ギターズである。エレキブーム以後、こうしたコピーギターづくりの伝統は、グレコやアリアプロなどの後発メーカーに引き継がれたが、残念ながらそこからは、こうしたビザールギターのすぐれた(こまった)迷品は生まれなかった。

d0017381_21582656.jpg ちなみに、イルコモンズが生まれてはじめて見て・さわったエレキはグヤではなく、テスコのもので(*テスコもグヤと並んで、というかグヤ以上に、世にも不思議なギターを世に送り出してきたビザールの名門である。代表作は「テルスター」と「クイーンメイ」である。クイーン・メイはその後、復刻されたらしいので、ネットで検索して、見て、笑おう)、いきなりシビれた(といっても感電したわけではない)。それは、フェンダーのジャズマスターのようにピックアップの切り替えスイッチがたくさんついたタイプのもので、どこからどうみてもビリビリしそうな電気製品なのだが、それにしてはコンセントがついてないので不思議に思った記憶がある。そのころはまだ小学生だったので、アンプにつないで音をださせてはもらえなかった。よって最初のエレキ体験はアンプラグである。

 以後、パンク、ニューウェーブ、アヴァンギャルド、そしてもういちど、パンク、グランジ、ポストロック、そしてさらにしつこく、パンクとアヴァンギャルドにふれ、そのつどいろんなギターを手にし、分解と改造の脱構築を繰り返してきたが、今はそれは省く(*その一部は「殺すなCOBRA」の非公式ライヴ映像で見ることができる)。

 話が逸れたので、話を元に戻す。そんなグヤなので、いや、そんなグヤだからこそ、イルコモンズが自宅でコレクションしておくのはもったいない、もっと陽のあたる場所に出して、ひろく世間の目にふれたほうがいいと思い、ちゃんとしたギターを買うための資金調達のために、手放すことにしたわけだが、あにはからんや、グヤとビザールギターをめぐる状況は変わっていた。

 お茶の水の楽器市場を席捲していたのはフェンダー社をはじめとする米国ブランドの定番製品で、グヤとビザールの評価は地に落ちていた(とはいっても高く評価されたことなど一度もないのだが)。その状況を一言でいうなら、グ・ロ・ー・バ・リ・ゼ・ー・シ・ョ・ン・である。

 風呂敷に包んだグヤを抱え、中古楽器の買い取りをやってる下倉楽器、クロサワ楽器、イシバシ楽器の戸をたたいてまわったのだが、のきなみ査定価格は低い。はじめは、ラップスチールギターだからか、と思ったが、どうもそうではないらしい。実際、下倉楽器では街路に面したショーケースに中古のスチールギターが並べられ、それには12万~15万という立派な値がついている。イルコモンズがもちこんだギターは、YahooAuctionにでている同機種のこれよりも、はるかにコンディションもよく、同じく同機種のこれとほぼ同等のものなのだが、買い取り価格はその出品価格よりも低い。なぜか?答えはこうである。

「フェンダーじゃないから」

 すなわち、ある店員さんいわく「フェンダーだったら売れるんですけどねぇ」。つまりそういうことである。いまやフェンダーが世界標準であり、「フェンダーにあらざるものギターにあらず」なのである(これはちょっと大げさか)。それによく考えてみれば、ここはお茶の水である。「ギタープレイヤー」や「ヤングギター」「ロック専科」(←今でもこの雑誌あるのだろうか?)に代表されるメインストリームのロック好きやギター小僧(←今でもそんな若者がいるのだろうか?)たちが集うキング・オブ・ロックの街である。ロックの王道にあってはビザールギターはあくまで邪道であり、ロックのメインストリームにあっては傍流の水たまりであり、そしてロックの王宮にあっては道化師である。どうやら来るところをまちがったらしい。吉祥寺か高円寺に行けばよかった。店で聞いた話では、グヤやテスコをよろこんで買っていくのは、主に海外から来たお客(コレクター)らしい。実際、海外のサイトなどではヴィンテージ扱いであり、コレクターズアイテムになってる。そういうわけで、お茶の水で売るのは、いったん保留することにし、でも、せっかくお茶の水まで来たので、日が暮れるまで楽器店めぐりをすることにした。

 まずはフェンダーをみる。というより、フェンダーばっかりなので、嫌でも目に入る。もちろんフェンダーが嫌いなわけではない。それどころか、"ちゃんとしたギター"として思い定めていたのは、フェンダーのテレキャスターとかジャガーとかジャズマスターのことである。もしテレキャスターで手ごろな値段の中古品があれば、ヘッドとボディを燃えるような赤に塗り替えて使おうと思っていた。テレキャスターのリアピックアップのまわりとマスターヴォリュームのまわりについてる、あのむきだしな感じのパネルの金属感がすきなのだ。もちろんピックガードもはずし、さらにむきだしにするとなおよい。1985年のLIVE AIDで、ちょっと中年肥りしたエルビス(エルビスといってもプレスリーではなく、コステロである)がダークスーツに真っ赤なギターを抱えてステージにあがり、ギター一本で「ALL YOU NEED IS LOVE」を歌ったのがとても印象的で、歳をとったら赤いギターを持とう、とそう決めていた。しかし手頃な値段のものはなかなかない。そうするうちに、目にとまったのは、テレキャスター・テキサスシリーズである。モズライトのギターについてるような、ごっついトレモロアームのついた(ピグスビー・ビブラート・テールピースというらしい)モデルである。まるで拷問具か工具のようなアームである。赤の発色もよい、うっとりしてみるが、定価11万(店頭価格9万)円である。プレカリアートにはとても買えない。さらに復刻とはいえ、よくできているので、改造もしにくい。あと10年してこれが中古市場に出たら、そのときにまた考えよう。50才で赤いギターを手にするのも悪くない考えだ。その時まで別のギターでトレーニングをして、肩を大事に生きていようと思った。

 次に目にとまったのは、フェンダーUSA公認のカスタム・ショップがつくったカスタムー・ヴィンテージである。複製のヴィンテージとはいえ、これもよくできている。塗料の剥げ具合といい、ネックの染みといい、これこそテレキャスであり、これが楽器である。傷ひとつないピカピカのギターから出る音など信用できない。打刻やピックガードの傷は、そのギターの音の履歴であり、無冠の勲章である。1940年代生まれのオリジナル・テレキャスターの年齢はすでに60歳である。第二世代にしてももう40歳を超えている。それを考えると、テレキャスはやはりキズのあるものが一番しっくりくる。テレキャスを買うなら中古に限る。とはいえ、このヴィンテージ・シリーズの値段はどれも70万から90万である、あははのはである。たぶん一生これを手にすることはないだろうから、よく観察しておく。まったく買う気がないので、ためいきも出ない。長年使いこまれたギターがどんなふうになるのか、隅々までよく観察する。

d0017381_2159412.jpg ショップでいろんなものをみていると、だんだん日常的な金銭感覚がおかしくなってくるので、そこから180度反転して、激安テレキャスをみてみる。グヤにはじまるコピーギターの伝統はいまも健在で、かつて通信販売を通じて市場を開拓したアリアやグレコのように、現在は、バッカスレジェンドトライアンフ、そしてK-ガレージといったメーカーがネットを通じてコピーギターを販売している。もちろんテレキャスのコピーもあり、それらは「テレキャスタータイプ」という名称で呼ばれている。テレキャスはすでにコピーされるものではなく、不変普及のギターの「タイプ」になったらしい。つまりバイオリンのそれのように、いまやそれが「ギターというものかたち」なのである。しかし残念ながら、こうした現在のコピーには、かつてのグヤのようなビザールなテイストはまるでなく、ただのテレキャスタイプである。つまりタイプにブレやズレがないのだ。一方、気になる値段は、9,800円から15,000円という低価格帯で、もともとこれはローエンドユーザー向けのエントリーモデルであり、俗に「使い捨てギター」を呼ばれる由縁である。次に気になるのは、いったいこれが、どこで(どの国で)大量生産されているかである。価格から考えてスウェットショップでつくられているような気がする(だからいくら安くても、また改造用であっても、これは買わない)。さらに、楽器としての性能や耐久性はまったく不明である。これはぜひ「暮しの手帖」に「商品テスト」をしてもらいたいものだ(たぶんあまり「ちゃんとしたギター」ではないと思う)。
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by illcommonz | 2007-03-17 21:55