いる・こもんず 【普通名詞】 01| ありふれて変なもの 02| 扱いにこまる共有物 03| 分けても減らぬもの 04| 存在とは常に複数で他と共にあり、狂えば狂うほど調子がよくなる
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 こころぼそいときは、こころがとおく、
うすくたなびいていて、びふうにもみだれて、
きえてしまいそうになっている。
こころぼそいひとは、だから、
まどをしめて、あたたかくしていて、
これはかぜをひいているひととおなじだから、
ひとはかるく、かぜかい?とたずねる。
それはかぜではないのだが、
とにかくかぜではないのだが、
こころぼそいときの、
こころぼそいひとは、
ひとにあらがうげんきもなく、
かぜです、と、つぶやいてしまう。
すると、ごらん、
さびしさとかなしさが、
いっしゅんにさようして、
こころぼそいひとのにくたいは、
すでにたかいねつをはっしている。
りっぱに、きちんと、
かぜをひいたのである。
辻征夫「かぜのひきかた」
by illcommonz
| 2010-01-19 08:41
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