「いいかい、エズミ、
真の眠気を覚える人間はね、
元のようなあらゆる機能が…
そう、あらゆる機能が、
無傷のままの人間にもどる可能性を
必ず持っているんだよ。」
(J・D・サリンジャー
「エズミに 愛と悲惨をこめて」)
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「米作家サリンジャー氏死去 「ライ麦畑」を若者支持」
「AP通信によると、小説「ライ麦畑でつかまえて」で現代の若者の心情を鮮烈に描き、寡作のまま隠とん生活を送っていた米国の作家ジェローム・デービッド・サリンジャー氏が27日、老衰のため、米ニューハンプシャー州の自宅で死去した。91歳。家族が明らかにした。1919年、ニューヨーク生まれ。大学で学びながら文章を書き始め、40年に初の短編小説を発表。第2次大戦でノルマンディー上陸作戦などに参加した後「ニューヨーカー」など著名雑誌に作品を発表した。51年、成績不振で退学に追い込まれる高校生を描いた長編「ライ麦畑でつかまえて」を出版。新鮮な口語体で、揺れ動く思春期の少年の視点から大人社会の欺瞞(ぎまん)を鋭くえぐった。道徳的保守派からは強い反発を招いたが、日本を含む世界中の若者の圧倒的支持を得て、小説家としての地位を不動にした。だが極端に寡作で65年を最後に執筆活動を停止。ニューハンプシャー州の田舎に引きこもり、世間と隔絶した生活を送っていた。2003年には作家の村上春樹さんが「ライ麦畑」を「キャッチャー・イン・ザ・ライ」の題で新訳し、話題となった。」(共同通信 2010年1月29日)
「最初におことわりしておきますけれど、僕にもしも自分の雑誌というものがあるとしたら、執筆者の経歴などというものを乗せる欄は絶対に設けないだろうと思います。作者の出生地、子供の名前、仕事のスケジュール、アイルランド独立運動の際に兵器を密輸したかどで逮捕された年月日などというものを僕は格別知りたいとは思いません。そういうことを知らせてやる作者はまた、開襟シャツなんぞを着たところを写真に撮られたりして、顔はきまったように四分の三の角度から撮ったプロフィール、深刻な表情を湛えている、といったあんばいです。」(J・D・サリンジャー「編集者への手紙」