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いる・こもんず 【普通名詞】 01| ありふれて変なもの 02| 扱いにこまる共有物 03| 分けても減らぬもの 04| 存在とは常に複数で他と共にあり、狂えば狂うほど調子がよくなる
はじめに、ふた、ありき

イルコモンズ編
見よ ぼくら
四人称複数
イルコモンズの旗
(Amazon.comで
大絶版廃刊中)
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▼「ゴダール・ソシアリスム」とその二つの予告編
▼「ゴダール・ソシアリスム」とその二つの予告編_d0017381_3191314.jpg
「私はゴダールが好きで嫌いで、ヴィスコンティやパゾリーニが神さまで、ゴダールを悪魔と思う。映画を手段にしている論説家、だから大嫌い、そう思う。ところが、そう思いながら、ゴダールとなると駆けつけるのは、澄みきっている映画を見せるからである。ゴダール以外、つくれぬ映画を。」(淀川長治)(「イルコモンズ・レイトトークショー「〈一〉なる国家と歴史の孤独に抗する〈二〉であることの愛とそのはじまり」」より)

 映画の守護天使・淀川長治がかつてそう書いたように、ゴダールは「映画を手段にしている論説家」である。だからゴダールが大好き。そう思う。そのゴダールの待ちに待った新作「ゴダール・ソシアリスム」は、どうやらこれまでの作品以上にその傾向が強そうなので、マイケル・ムーアの「キャピタリズム」と同じくらい、たのしみでたのしみでたのしみで仕方がなかった。それがようやく来月みれる。東京ではこの新作の公開とあわせて、過去の作品を集めた「ゴダール映画祭2010」も開催されるらしいが、そのラインナップをみると、どの作品もこれまで映画館とヴィデオとDVDで何度も何度何度も何度も何度もみてる作品なので、もうみなくてもいいはずなのだが、ところが、そう思いながら、ゴダールとなると駆けつけるのは、ゴダールの映画がいつみても色あせない澄みきった映画だからである。それは今回の新作も同様、というか、どうやらこれまでの作品以上にそうなっているようで、ゴダールがはじめて全編デジタル・ヴィデオカメラで撮影した(前作「アワー・ミュージック」では「0か1か」しかないデジタル表現にケチをつけてたはずだが、このへんの首尾一貫性のなさが、いかにもゴダールらしい)」という今回の作品は、相当に「澄み狂った映画」のようだ。


▼Jean-Luc Godard 「FILM SOCIALISME」オリジナル予告編(英語字幕つき)

 「ゴダール・ソシアリスム」の日本語版サイトは、まだできたばっかりで、「劇場情報」しかコンテンツがないため、どういう映画なのかよくわからないが、このオリジナル版の「予告編」をみる限り、以前ゴダールがゴーモン社(映画の創成期からあるフランスの映画配給会社)からつきかえされたという下の「アイディア」がベースになっているようだ。

 「アイディアは次のとおり、それはまず、社会主義者が権力をにぎった時代に展開される、次に、社会主義者たちが女たちによって、ドレスに熱湯がこぼされるようにこぼされ、かわって女たちが、国家で、ベッドで、台所で、そのほかのあれこれのところで権力をにぎるときに展開される。その次の時代、今度は子供たちが女たちを、病人が看護婦を打破するように打倒し、女たちの悪魔的な権力を奪取するような次代に展開される。それは最後に、こどもたちがもはや権力をもてあそぶのをやめ、ひどく不安になるときに展開される。暗がりや家畜小屋、衰弱した森、地下鉄、打ち捨てられた工場などで動物たちが動きまわっているのだ。飼いならされている動物たちの攻撃は次第に、連携がとれていて、しかも野生的なものになってゆくが、こどもたちは、それをはねかえすために、かつての敵である社会主義たちや女たちと同盟をむすぶことには躊躇する。」(ジャン=リュック・ゴダール「動物たち」)(「イルコモンズのふた「ゴダールの「社・会・主・義・映・画」」2009年6月16日より)

 フランスの公式サイトをみると、映画全体は「のようなものたち」「われらがヨーロッパ」「わたしたちの人間性」という3つのパートから構成されているようなので、おそらくは上の「アイディア」をおまけ程度のストーリーとしつつ、古代エジプトから現代、ナポリからパレスチナへと難破をくりかえしながら、「人間性」についての前代未聞の論説を展開してゆくという、まさに「ゴダール以外、つくれぬ映画」をみせてくれるのだろう。今回の作品ではじめてデリダが引用されたのは、「ヨーロッパ」や「動物たち」がテーマになっているからなのだろうが、ゴダールのおもしろさというか、おかしさは、まともな哲学者ならとても口にしないような大胆で破天荒な論説を、考証も論証も何にもなしに、こどものような無邪気さで云いきってしまうところにあって、このゴダールの悪魔性というか野蛮さがたまらなくおもしろいのである。それはまるで「未開人の脱論理的な映像詩的思考」を見ているようでもある(ゴダールがパリ大学ソルボンヌ校時代に民族学を専攻していたことについては「文化人類学解放講座」の「文化人類学者になりそこねた人たち」をご覧ください)。

 ちなみにゴダールは、カンヌ映画祭「ある視点」部門のために、もうひとつ別の予告編をつくっていて、それは映画のほぼ全編を早回しでみせてしまうという、これまた前代未聞の予告編(おそらくゴダールは「予告編は全編を短く縮めればよいのだろう、縮めれば...」ということだけで、これをつくったのだろう)となっていて、これも「ゴダール以外、つくれぬ野蛮な予告編」だと思う。


▼カンヌ映画祭「ある視点」部門のための予告編

 はたして、この「前代未聞の論説映画」と、その「野蛮な予告編」を前に、日本語版予告編の製作者がいったいどんな予告編をつくってみせてくれるのか、これもまたたのしみである。


▼「ゴダール・ソシアリスム」とその二つの予告編_d0017381_3483739.jpg▼ジャン=リュック・ゴダール監督
「ゴダール・ソシアリスム」
[日時] 2010年12月18日(土)~
[場所] 日比谷TOHOシネマズ シャンテ
[公式サイト] http://www.bowjapan.com/socialisme/

▼「ゴダール・ソシアリスム」とその二つの予告編_d0017381_3491842.jpg「ゴダール映画祭2010」
「ゴダール映画祭2010」では「勝手にしやがれ」、「気狂いピエロ」、「映画史特別編 選ばれた瞬間」を中心に、現存の世界で最良の状態の35mmフィルムで代表作長編短編10作品を35mmフィルムで一挙上映。ほぼ10年ごとに大きな変貌を遂げたといわれるゴダール映画だが、どの映画にも詩が息づいているのがご覧いただけるだろう。」

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[追記] まだちゃんと本編をみてない映画について、予告編だけで、これだけあてずっぽうの論説を書くイルコモンズも相当に野蛮である。さすが文化人類学者になりそこねただけのことはある。
by illcommonz | 2010-11-16 03:53
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