「デモクラシーはありませんよ、女性たちぬきではね。この社会の半分以上は女性たちですよ、その半分なしで、どうしてデモクラシーがありますか?革命がありますか?正義がありますか?自由がありますか?」(ナワル・エル・サダーウィ)
こないだジジェクが出演していたアルジャジーラの番組「リズ・カーン・ショー」が「革命の母」という番組を組んでいたので、「革命の母」って誰だろう?と思って見てみたら、ナワル・エル・サダーウィだった。短編集「女たちに天国はあるのか」を読んだ時の印象とはちがって、革命における女性たちの役割とエジプトの未来について語るサダーウィは、「母」というよりもむしろ、頼りがいのある「肝っ玉母さん」のようにみえた。誰にでもわかることばで「ほんとうのデモクラシー」や民衆への信頼を語るサダーウィは、母というよりもむしろ「おかん」という感じで、とてもすてきだった。トルストイの時代の作家は、民衆がもっとも信頼し、かつ敬愛する存在だった。作家の意見や話をきくために大勢の人たちが、まさに今のスターやアイドルに人びとが群がるような感じで集まり、その話に耳をかたむけたという。「映像の世紀」でその映像をみたことがある。今でも作家が社会や政治についてあたりさわりのないコメントを述べることはあるが、サダーウィのようにラディカルな意見と希望を語る作家を最後に見たのはいつだろう。