「わたしの翻訳者で友人のアケミ・タニガキ(東京在住)に短いメールを送った。返ってきたメールはこういう書き出しだった。「心配してくださってありがとう。わたしは大丈夫で、家族もみな、大丈夫です。だけど、とても悲しくて、無力感と心配でいっぱいです」。そして、そのメールには、日本のあなたの読者にあてた簡単で短いメッセージを公式サイトに載せてもらえないか、と書いてあった。「非常につらい目にあっている人たちにかける言葉を見つけるのが、とても難しいのは、よくわかっていますけれども」。そのとおりです、アケミさん。それは難しい。不可能だと言っていいぐらい。でも、せっかく頼んでくれたのだから、がんばってやってみます。
日本の読者の皆さんへ
わたしたちとあなたがたの間には海があります。でも、その海で、わたしたちとあなたがたはつながっています。日本を襲った大津波は海を旅しながら、だんだん弱くなり、アメリカの西海岸に達しました。それはここではほとんど害をなしませんでした。けれども、あなたがたの悲しみと苦しみが大きな波となって、その小さな波とともに、わたしたちに届きました。こちらではたくさんの、とてもたくさんの人が今、あなたがたのことを考え、あなたがたのために泣き、最悪の時が早く過ぎ去るように祈っています。そのことをどうか知っていてください。このように大きな喪失の悲しみ、苦しみ、不安のさなかで、日本のごくふつうの人々が示す静かな勇気に、わたしは言葉にできないほどの賞讃をおぼえます。あなたがたのしっかりとした、忍耐強い顔を見ると、その美しさに打たれます。ひとりひとりの顔に目を向けると泣けてきます。あなたがたに力がみなぎり、よりよい明日への希望を胸に抱けるよう願っています。
愛をこめて アーシュラ・K・ル=グイン 2011年3月14日
(翻訳:谷垣暁美)
(原文)
http://blog.bookviewcafe.com/2011/03/14/to-my-readers-in-japan/