
▼ジャン=リュック・ゴダール「新世界」(1962年)
「このばかげた物語は、すでにはじまっている原子力の未来の、予測しがたい愚かな結末を描いたものである。それは誰も気づかないあいだに、私たちにさまざまな影響をおよぼすだろう。そのおそるべき爆発は、いつのまにか人間を変えてしまい、私たちもまた、刻一刻とそれに冒されてゆくだろう。それは小さな変化ではあるが、私たちを破滅させずにおかないものだ。」

「パリ上空12万メートルで原爆が爆発」

「それはとてもゆっくりと人びとの精神を蝕んでいった」

「どんなにこれまでと同じようにみえたとしても、である」

「あらゆるモラルが突然失われ消えたのだ」

「新しい世界がはじまってしまったのだ」

「私もまた、あの忌まわしい機械性に冒されはじめている」
3.11の原発事故の直後、これからはじまる経験したことのない生活/人生にそなえて、まず最初にみておくべき映画は何だろうと思い、いろいろ考えた結果、やはり、ゴダールの「新世界」だろうと思い、4月の大学の講義で上映したのだが、いま考えると、タイミングをあやまったようだ。むしろ事故から100日が経過した、いまからこそ見ておくべき映画かもしれない。一見するとなにも変わらないようにみえる風景のなかで「人間なら誰しもが持っていた」はずの何が失われていったかについては、どうぞゴダールのこの映画をご覧ください。
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[追記]▼菊地成孔
「女性編集者は狂うのか(同時多発)」
菊池さん、ゴダールの「新世界」が現実になってしまったのですよ。後世のために、どうか、いま起きていることを克明に書き記しておいてください。