かつてジョン・レノンは「国や宗教なんてないんだと想像してごらん」とうたい、その歌詞は「あまりに非現実的で、ユートピア的すぎる」と批判されたが、その当時の自分にとっては、「日本が沈没すると想像してごらん」と、それを描いてみせた小松左京のデストピア的なイマジネーションの方がはるかにリアルだった。
小松左京が描いてみせた「最悪のシナリオ」が現実化することはなかったが、いま、それとは「別の最悪のシナリオ」を、自分たちは、「SF」や「科学空想ドラマ」はなく、「異常な日常の現実」として生きている。まるでSFや空想ドラマを生きているような錯覚を感じている。ドラマやパニックのない「静かな破局」に立ち会っている。見えない放射能に、なすすべもなく、「なしくずしの死」を生きている。
だから、いま、自分たちは、この惰性に抵抗するため、「日本が沈没する」という死産したイマジネーションのかわりに、「レヴェル8の世界」という、すこぶる近い「近未来」の物語を、同時代のアーティストたちと一緒に描こうと思った。抑圧された不謹慎なイマジネーションとデストピア的想像力を解放するため、想定外の状況を想定するアーティストの想像力に賭けてみた。
レヴェル8の世界へようこそ、「アトミックサイト展」開催中。
▼アトミックサイト展
http://atomiksite.wordpress.com/
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「小松左京さんが死去 「日本沈没」「復活の日」」
「日本沈没」「復活の日」などのベストセラーで知られ、日本SF小説界の第一人者である作家の小松左京(こまつ・さきょう、本名・實=みのる)さんが、26日午後4時36分、肺炎のため、死去した。80歳だった。葬儀・告別式は親族で済ませた。1931年、大阪市生まれ。京都大文学部卒。在学中に漫画を描き、同人誌などに小説を発表する。作家の故高橋和巳とは学生時代からの同人誌仲間で、ライバルだった。ラジオのニュース漫才の台本を執筆する一方、米国のSF小説に影響を受け、61年、「SFマガジン」のコンテストで「地には平和を」が入選。以後、生物兵器ウイルスと核戦争による人類滅亡を描いた「復活の日」や社会性の強い「日本アパッチ族」「終わりなき負債」、超能力者スパイをめぐる活劇「エスパイ」、第6回SF大賞を受賞した「首都消失」など多くの話題作を送り出した。