「1994年1月1日、北米自由貿易協定(NAFTA)の発効日に、サパティスタ民族解放軍は、「NAFTAは貧しいチアパスの
農民にとって死刑宣告に等しい」として、メキシコ南部のチアパス州ラカンドンにおいて武装蜂起した。NAFTAによって貿易関税が消失し、アメリカ合衆国産の競争力の強いトウモロコシが流れ込むと、メキシコの農業が崩壊することや、農民のさらなる窮乏化が予測されたのである。実際にメキシコでは、NAFTA発効後、多くの農民が自由競争に敗れて失業し、メキシコ市のスラムや北部国境のリオ・ブラーボ川を越えてアメリカ合衆国に流入した。ラカンドンでは、木材のグローバル商業化や、石油やウランの発掘がもくろまれており、当地の先住民を一掃する大規模な強制排除計画が進みつつあった。具体的には、白色警備隊と呼ばれるギャング組織が大規模農園主によって雇われ、暗躍し始めていた。身に迫る脅威を前に、インディオたちはついに、500年の抑圧を経て立ち上がったのである。」
今日の講義に出席していた国際政治学専攻の大学院生から「TPPについてどう思いますか?」とたずねられたので、「TPPはNAFTAの亡霊で、メキシコと同じことがくりかえされるだろうけど、メキシコとの大きなちがいは、日本にはサパティスタが現れないだろうということですね」とこたえた。でも、それでは腑におちないようなので、「TPPはフリードマンのもとで経済学を学んだ国内の新自由主義者の生き残りどもが発動した3.11以後の「ショックドクトリン」だと思いますよ」とこたえたら、こちらには納得がいったようだ。なにしろ講義で「ショックドクトリン」の映画をみた直後だったので、余計、腑におちたのだろうと思う。
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[追記] あるいは、インドのようになるだろう。
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「30分に1人が自殺:借金と新自由主義改革に苦しむインドの農民たち」
「驚くべき数字です。インドでは過去16年間で25万人もの農民たちが自殺しました。これは30分に1人の計算です。なぜ、こんなことが?インドの農民自殺に関する新リポート「30分ごとに:インドにおける農民の自殺、人権と農業危機」を共同執筆したスミタ・ナルラさんによると、インド農業を世界マーケットに開放した経済自由化が、大きな原因だといいます。自由化で国の農業助成が消え、農民は経費の増大に加えて収穫と利益の減少というダブルパンチに襲われています。」(デモクラシーナウ!2011年5月11日)
さらに日本の場合、農地の放射能汚染という問題もあるので、「トリプルパンチ」に襲われることになる。
[おまけ]