はじめに、ふた、ありき
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▼「東京電力福島第一原発 2012年6月30日」 ▼「福島第一4号機プールで冷却装置停止=ポンプ2台に異常か」 「東京電力は30日、福島第1原発4号機の使用済み燃料プールの水を冷却する装置で異常があったことを示す警報が鳴り、自動停止したと発表した。東電や経済産業省原子力安全・保安院によると、警報が鳴ったのは30日午前6時25分ごろ。冷却装置に2台あるポンプがいずれも動かなくなり、モーターを制御する非常用電源装置が故障した可能性があるという。東電は1日以降、復旧作業を始める方針。冷却装置が停止した際に31度だったプールの水温は、30日午後6時時点で36.6度に上昇したが、保安院は「保安規定の上限の65度に達するには約60時間の余裕がある」としている。」(時事通信 2012年6月30日) 「一九八〇年代後半、荷物運搬用の馬のDNAを遺伝子操作したエレホン国の偉大な遺伝学者P・U・ポシフ博士にノーベル賞が授与された。受賞の理由は、当時「新しい科学」として脚光を浴びていた「移送学」に多大な貢献をしたというものだった。なにはともあれ彼は、普通のクライデスデール種の馬の2倍のサイズの馬を「創造」(神の領域にふみこんでいったこの応用科学を語るのにこれほどふさわしい言葉はないだろう)することに成功したのである。 体長も、背丈も、横幅も、すぺて2倍というこの馬は「4倍体」、つまり染色体の数が通常の4倍ある馬だった。ポシフ博士はいつもこう弁明していた。「仔馬のときはちゃんと4本の脚で立っていたのですが」。それはさぞかし見事な姿だったことだろうが、少なくとも近代文明の粋を集めた情報伝達装置に記録され、一般公開されたときには、あの馬は立てなくなっていた。体があまり重すぎたのである。なにしろふつうのクライデスデール種の8倍の体重があった。 見物客や報道陣に見せるときには「ホースの水を止めてください」というのがポシフ博士の指令だった。哺乳動物としての正常な体温に保っておくために、普段は四六時中、体中に冷却水を流していたのだが、いまにも体の中心からステーキになっていくのではないかと、見ている方は気が気ではなかった。この哀れな馬は、皮膚と皮下脂肪との厚さが通常の二倍あった。これでは表面積が四倍あるといっても、まともには冷えてくれない。毎朝、この馬は、小さなクレーンの助けを借りて立ち上がり、車のついた箱の中に吊るされたバネにかけられる。バネは足にかかる体重が半分になるように調整されている。 体を冷やすためにも、八倍もの体に酸素を補給するためにも、いつもハァハァ喘いでいなけれぱならなかった。気管の断面積はふつうの四倍しかなかったからである。それから食生活が間題だった。毎日、ふつうの馬の八倍の量のエサを、四倍の広さの食道に押し込まなくてはならたい。血管も相対的に細くなっているから、血液循環の抵抗も増す。心臓も大きな負荷に耐えねばならない。聞くも哀れな馬の物語…… この寓話が示しているのは、二つ以上の変数がちぐはぐに増減したらどんな結末が待っているかということである。四倍体の馬の不幸は、体長と表面積と体積とのバランスが崩れてしまったことにある。 この種のケースで今日、最も有名なのは、原子爆弾中の核分裂物質のふるまいだろう。ウラニウムは天然に産出され、自然状態でも常に核分裂を続けているが、反応の連鎖が確立されないために爆発とはならない。各原子の崩壊時に放出される中性子が別の原子に当たって二次分裂を起こしても、ウラニウムの塊が臨界値より小さいときは、一回の分裂で出る中性子のうち、二次分裂を起こすものの数が平均一個以下であるために、連鎖はいずれ尻切れとなる。塊を大きくすれぼ、二次分裂を起こす中性子の割合も増加し、臨界点から先では、分裂プロセスが末広がりの累乗的増大を示し、爆発となる。」(グレゴリー・ベイトソン「学校の生徒でもみんな知ってること」より) ................................................................................ この寓話から教訓として学ぶことができる「原発の悲劇」や「原発という愚行」はなんだろう。
by illcommonz
| 2012-07-10 21:58
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