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エリザベス・ギルバート「創造性をはぐくむには」(TED講演 2009年)
(Elizabeth Gilbert "Your elusive creative genius" 2009)
「もしはじめから、自分には非凡な才能が備わっているなどと信じたりしなければ、そして、その力は借りものにすぎないと考え、それはどこか謎めいたところからやってきて、人生に寄り添い、終わったらまた別のところへ去ってゆくものだと思えば、すべてが変わります。」(エリザベス・ギルバート)
いまから何年か前、ふと思いついて、
「やっぱり芸術に(C)はなくてもいいと思う(その理由)」という覚え書きのようなものを書いたとき、念頭にあった(というより、去来していたのは)カート・ヴォネガットがどこかの大学でやった講演での話だったが、その後、それが単なる「意見」から、ゆるぎない「確信」に変わったのは、このエリザベス・ギルバートのTED講演を聞いたときだった。アフリカのシャーマンのところでドラムを学び、トランスする人たちを山ほどみてきた経験があるので、エリザベス・ギルバートが語るダイモンとジーニアスの話や、北アフリカのダンサーの話はことさら腑におちる。"それ"がおりてきたときには「紙と鉛筆」が必要だという話は、「食べて、祈って、恋して」の第一部にも出てきた挿話だが、エリザベス・ギルバートが身ぶりをまじえて紹介する、トム・ウェイツから聞いたという話は、その光景が目にうかぶようで可笑しい。
ところで、3.11以後、「アートは無力だ」「音楽にできることはない」といって表現活動をやめた人たちがいたそうだが、そういう人たちは、いまどこでなにをしているのだろう。もしほんとうにそういう人たちがいるのなら、そういう人たちこそ、ぜひ聞いてもらいたい講演である。というのも、ダイモンやジーニアスたちは気まぐれなので、3.11の後、どこかに去ってしまったとしても、時間がたてば、またかならずもどってくるはずだからである。
[追記]
ホイットマンやエズラ・パウンドの詩作に寄せて、ルイス・ハイドが「ギフト」と呼んでいたるものを、エリザベス・ギルバートがここでは、「借りもの(loan)」ととらえているところはおもしろい。