はじめに、ふた、ありき
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(承前・9月18日のつづき)
フォークではじまり、 オールドスクールパンクの 陰と陽が交錯した後の、 祭りのシメはチンドン。 ステージの最後は、 大熊ワタルさん率いる シカラムータのチンドンでした。 この日の編成はレギュラー奏者の5人に、ちんどん太鼓担当の こぐれみわぞうさん(*すみません、こないだのブログに、 大熊さんが「ユーガーデン」に"ソロ出演"と書きましたが、 こぐれさんも途中から太鼓で参加されてました)、それに三人の 女性ダンサーという大キャラバン編成、街ゆく音楽の隊商でした。 会場で配布された宣伝チラシには、 「ロック、ジャズ、トラッド……あらゆるジャンルの垣根は完璧に踏みにじられ、 シカラムータの破壊/再生のメリーゴーラウンドに乗って、すべては爆笑と 号泣の渦に巻き込まれてゆく」 という、ジンタの口上のような広告文がありましたが、はっきり云って、これは 過少広告だと思います。現物はそんな生やさしいもんじゃありません。もし仮に 日本広告審査機構(JARO)とAC公共広告機構が許したとしても、イルコモンズ は許しません。実際のそれは、といえば、兼高かおるがブッとぶような、世界の 裏町横町経由、トリプルブッキングは朝飯前行きの、真夜中の音楽の貨物便 ジェットエクストリームなトラベリング・ソウル・フラワーズ・ブギウギ・ダズン・ オーケストラ来日記念盤発売記念凱旋帰国公演ツアーみたいなめくるめく 世界の音楽の、ちんどん旅行の旅です。タバコ屋さんの角を曲がるといきなり ダマスカスで、その先の国境の狭いトンネルをぬけるとマドリット、かと思いきや、 バグダットだったので、不安になって後ろふりむくと、久保田早紀が電気ピアノで 井戸の水をくみあげているという、万事すべてがそんなエトランジェな音楽の 実験なんですよ、本当は。(なにが本当なんだか...) と、ま、戯言はさておき、思い起こせば、ロンドン・パンクの仕掛け人である マルコム・マクラレンがピストルズをぶっ壊した後に向かったのがヒップホップと ワールドミュージックで、シカラムータの音楽のスタイルは「ちんどん」という ジャンルを持たない文化圏ではたぶん、マルチ・カルチュラルなワールドミュージック として括られるようなところがあり、それは、たとえば、 「あらゆる方角へ進め!」をスローガンに、 バルカン半島で結成された(ことになってる) "3ムスタファズ3"なんかの活動に通じる ものなのですが、いざ、このふたつの楽団を 比べてみると、そこにはいくつか目立った ちがいがあり、そのへんあたりから、 このなんともうまく広告しがたい シカラムータの特徴が見えてくるような 気がします。 まず、どちらの楽団も世界の音楽について幅広い知識と深い造詣を持ってて、 特に3M3の場合は、それこそ文化人類学者みたいに、博物学的な視点から 世界中のレアな音楽や楽器を収集し、それを文化相対主義的な立場から 等価に扱い、再現してみせるので、それを通して、なるほど 「世界は多様で広い」という認識を得ることができるのですが、逆に云えば、 それでおしまいで、それはすぐに飽きてしまう。 かたやシカラムータには3M3にはないアグレッシブさがあって 「あらゆる方角に進め」ではなく、「あらゆる方角につっこんでゆけ!」 というパンク感があります。しかも、そのつっこんでゆく角度は常に 下向き加減で、グローバリゼーションとそのマーケットのいうことをきかない 世界の底辺をたえまなく横断し、街のちんどん屋がそうであるように、 具体的な土地とそこに住む人間に直につながってゆこうとする 意思が感じられます。それによって示されるのは、単なる世界の 文化の多様性ではなく、その多様な文化の「底辺の豊かさ」の方で、 そこから得られる次の認識は、ものすごく貴重なものように思えます。 それはつまりこういうことです。 「グローバル化した世界よりも、 その底辺の世界の方が ずっと広くて豊かだ」と、 そんなことを、「ソラミレば地球」と、 カザルスの「鳥の歌」、そして最後に 友部正人と一緒に演ったソウル・フラワー・ ユニオン版の「平和に生きる権利」を 聴きながら、ずっと考えてました。 「マーケットのいうことをきかないちんどん屋」 というのは、さすがに営業的にはマズいでしょうが、 もしシカラムータのための一行広告を書くとしたら、 これかなと思いました。 で、最後に、強引に話をたたんで、まとめると、 ジャンルを問わず、年齢を問わず、その他もろもろを問わず、とにかく、 ゆうことをきかない人間たちのつくるものの方が、マーケットにおとなしく 並べられているものよりも、ずっとおもしろいということ、これに尽きます。 ということで、ゆうこときかない者どもに、さきわいあれ。 以上、イルコモンズでした。 [追記] この日の祭りの最後の花火は、もちろん、いうまでもなく、 アナーキーの「東京イズ・バーニング」とミチロウの「仰げば尊し」でした。
by illcommonz
| 2005-09-21 01:00
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