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いる・こもんず 【普通名詞】 01| ありふれて変なもの 02| 扱いにこまる共有物 03| 分けても減らぬもの 04| 存在とは常に複数で他と共にあり、狂えば狂うほど調子がよくなる
はじめに、ふた、ありき

イルコモンズ編
見よ ぼくら
四人称複数
イルコモンズの旗
(Amazon.comで
大絶版廃刊中)
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▼夏休みが終わって
▼夏休みが終わって_d0017381_11131791.jpg
後期最初の、
今日の講義は、
前期に実施した
定期試験の講評でした。

実施した試験問題は、
いつもと同じく、こういう
問題でした。


【問題】************************
自分で自分にこたえられる問題を自分でつくり、
自分で答えを出して、自分で評価してください。
*****************************
これは今から5年くらい前に、東京のある女子大の非常勤講師として、
はじめて教場に登壇したときから、教科によらず、科目によらず、
どの大学の、どの学部でも、同じようにずっと出しつづけてきた
試験問題で、一種のインディーズ・ステューデント養成試験、
別名・クール・クール・インディペンデント交感テスト(笑)です。

もともとは「現代の日本文化」を"教える"という講義ではじめたもので、
ただし・・・「ここでの"教える"は、educate ではなく、あくまで
情報を"おしえる"という意味の inform であって、僕はみなさんに
教えるようなことは何にもありませんよ」という「おことわり」つきの、
講義の現場から、うまれてきたものでした。

で、今年は特に、勤務先の大学が、試験中の不正行為の防止と
その監督および処罰に、非常に神経をとがらせてることが判ったので、
ならば及ばずながら、イルコモンズが、ひと肌ぬいで御協力いたしましょうと、
カンニングその他もろもろの不正行為を完璧に防止し、撲滅するために、

【通達】**************************************
「持ちこみすべてOK、PC・携帯電話・電子辞書の使用もオール可、
そのほかグループでの話し合いや助け合いも可。ネット検索も可」
******************************************
という新しいレギュレーションを試験的に導入して試験を実施したので、
不正行為はゼロ、疑わしい答案は一枚たりともありませんでした。
さらに試験監督の負担も著しく軽減され、処罰の対象となるものも
なにもありませんでしたし、そしてなによりも、総体的に、
答案のクオリティがめざましく向上しました。

しかも、あろうことか試験当日に、講師が遅刻してきたため、
そのおわびに制限時間なしの時間無制限の試験になり、
しかも教室の席が足りないというハプニングまで発生したため、
席のない学生は教室の床にベタ座りして試験をうける始末。
ただし時間を無制限にしたことで、これまた、総体的に、
答案のクリエイティヴィティがめざましく向上しました。

参考までに、試験中、答案作成支援のために教室で流した
「定期試験のためのサウンドトラック」の、セットアップ・リストは、
次のとおりでした (ただし曲順はやや順不同)。
...........................................................................
▼夏休みが終わって_d0017381_11404831.jpg
 ・ジム・オルーク「ハッピー・デイズ」
 ・マックス・イーストレイ「ハイドロフォン」
 ・ブライアン・イーノ 「ディスクリート・ミュージック」
 ・藤原ヒロシ 「ドーン~ダブハンター」
 ・ウィリアム・バシンスキー 「ディスインテグレーション・ループ第4番」
 ・J-L・ゴダール「ヌーヴェル・ヴァーグ(OST)」
 ・池田亮二「スペース」
 ・ギャビン・ブライヤース 「タイタニック号の沈没」
 ・LGS 「ダイアル・トーンズ」
 ・コンピュータ・スープ「ソフト・ビニール」
 ・フェネス「セシリア」ほか
.............................................................................
フェネスの「セシリア」が流れる教室で、学生たちが熱心に答案づくりに
とりくんでいる風景を教壇からながめると、なんだか岩井俊二の映画の
一場面を観てるようで、なかなか感動的でした。で、テストのおわりは、
いつも最後にかける、ヴンダーの 「ルック・アウト・フォーユア・セルフ」でした。
フェネスとヴンダーは、夏のテストでも冬のテストでも、どちらでも結構、
つかえますから、ぜひ一度テストしてみてください。

で、今日は、このテストのコンセプトとその「こたえ合わせなき講評」の日に
うってつけの文章を。夏休みのあいだに見つけておいたので、そのプリントを
最後に配布して、この日の講義をおわりました。そのテキストというのは、
鶴見俊輔が岩波書店の「図書」に連載している「自分用の索引」の中の
「夏休みが終わって」というタイトルの短いコラムで、そこにはこんな風に
書いてありますので、このブログを見てる学生諸君は、特に次の引用箇所に
よぉく目を通しておくように。試験にはたぶん出ないけど、大事なことなので、
しっかり読んでおくこと、以上。では、また来週。

=======================================
 明治六年に全国ではじまった学校制度は、①先生が問題を出す、
 ②その正しい答えとは先生の出す答えだ、という前提にたっており、
 生徒自身がそれぞれ、6歳までに知っていることの中から自分で
 問題をつくり、答えを出すということは除外されている。もし大学まで
 進むとして、十八年、自分で問題をつくることなく過ぎると、問題とは
 与えられるもの、その答えは先生が知っているもの、という習慣が
 日本の知識人の性格となる。今は先生は米国。[...] 教師も、明治
 以前の寺小屋の気風を受け継ぐ時代から離れて、大学教育学部
 養成の教師たちになると、知識人共通の性格から自由ではない。
 [...]そのときの光背を失わずに、点数によって人を見ない運動を
 続けている人は、現代の中で私の知る限り、無着成恭だけである。
 こうした姿勢を日本の教師は、小・中・高・大を通して失った。無着
 成恭が僧侶になったのは、今の日本の学校に彼のいる場所がない
 からだ。[...]日本の大学は、日本の国家ができてから国家がつく
 ったもので、国家が決めたことを正当化する傾向を共有し、世界
 各国の大学もまたそのようにつくられて、世界の知識人は日本と
 同じ性格を持つと信じられている。しかし、そうではない。(以下略)
 鶴見俊輔「夏休みが終わって」

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[追記1]
こないだ見た映画で、モリ・トラオレは、「人を、1、2、3と数えるのは、
人をバン、バン、バンとピストルで撃つのと同じです」て、いうてはったけど、
そやったら、45点とか、66点とか、21点とか、人に点数をつけんのんは、
マシンガンつこうて人をハチの巣にすんのと同じなんやろか、とか、
そんなことをボンヤリ考えながら、講義を終えて、教室をでると、
別学部から聴講しにきてる学生さんが寄ってきて、こう、云われました。
 「先生は反抗的ですね」(たぶん(笑)つきで)
普通、こういうのは、教師が生徒に対して云うことなので、さすがに
ギョッとしましたが、でも、つい、「あ~、気がつかなかったけど、
そうかも。」って、なんだかアホみたいな返事をしてしまいました。
で、後になってから、「そうか、あの時はこういうふうに返事すれば
よかったんだ」って反省しました。これも鶴見俊輔が書いてることで、
反抗的なものはたしかに煩(わずら)わしいものかもしれないけど、
でも「反動は決して悪ではない」と。
というわけで、どうやらイルコモンズは、まだまだ修養が足りないようなので、
どこかの寺小屋のモンクに弟子入りさせ、鍛えなおしてもらったほうがよさそうです。
なので、もしどこかよい寺小屋があれば、ぜひ、イルコモンズまで、ご一報を。

[追記2]
「答案用紙に写真とかイラストとかふき出しみたいのがあるけど、
あれ、なあに?」という問い合わせを受けましたので、おこたえします。
あれは「つるつるぴかぴかのまっさらな白紙の答案用紙を前にすると
ビビってアタマがまっしろになってしまう」という意見がイルコモンズから
寄せられたので、それをうけて、イルコモンズにデザインしてもらった
答案用紙です。なにしろ「問題」を受験者に白紙委任しているので、
そのうえ答案用紙までミニマルアートみたいな白紙だと、さすがに
手も足も出すことができず白旗をあげる学生も出てきかねないので、
「使っても使わなくてもどちらでも自由」ということで特別に用意した
補助車つき自転車ならぬ、補助デザインつき答案用紙です。
いったい誰がどっちをむいて誰にむかって何を云っているのか、
てんで、ちんぷんかんぷんなモノローグ的論述を避け、
議論にディスカッシヴなフローとリズムを与えるための
フローチャートとキャラクターアイコンをあしらった、
ユーザーフレンドリーなデザインになってます。
それ以外に、どうしてもうまく問題が思いつけない
受験者のためにイラストをつかったサブテストも
オマケでついてて、ユニバーサル・デザインとか
そういうのがニガテなイルコモンズにしてはめずらしく
バリアフリーなデザインです。この用紙を思う存分使って
おもいっきりラクガキやカキコミをしてくれた受験者や
ふきだしやアイコンを上手に使ってニュアンスと
笑いに富んだ議論を展開してくれた受験者もいて、
答案を読むのがぜんぜん苦痛じゃありませんでした。
「学生たちの答案を読まされるのは苦痛だ」と、
いつも悲鳴をあげている教師の方は、
いっぺん、この方式を試してみられるとよい
と思います。なにしろ簡単ですから、
誰でもできます。
ここにサンプルがありますので、
詳細はこちらをご覧下さい。

■平成十七年度 文化人類学解放講座 前期学期末試験用 補助答案用紙
by illcommonz | 2005-09-27 11:27
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