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いる・こもんず 【普通名詞】 01| ありふれて変なもの 02| 扱いにこまる共有物 03| 分けても減らぬもの 04| 存在とは常に複数で他と共にあり、狂えば狂うほど調子がよくなる
はじめに、ふた、ありき

イルコモンズ編
見よ ぼくら
四人称複数
イルコモンズの旗
(Amazon.comで
大絶版廃刊中)
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▼タンザニアン・フライト・メア・ムービー
▼タンザニアン・フライト・メア・ムービー_d0017381_0511265.jpg映画「ダーウィンの悪夢」を見てきました。
上映に先立ち、ちょうど昨日が最終日
だった「山形ドキュメンタリー映画祭」で、
この作品が「審査員特別賞」ともう一つの
賞を受賞したことがまずアナウンスされ、
次いで上映後には、NHKが放映権を買い、
また来年の夏には、ビターズエンド社の
配給で劇場公開されることが決まった、
とのアナウンスがありましたので、この
グローバリズムの悪夢にほかならない、
アフリカの新たな「闇の奥」の「現実」は、
そのときにぜひご自分の目で、しかと
見とどけて、最後に「HORROR!!!」と
叫んでください。

(以下、ここにはあらすじや説明ぬきで、感想だけを書きとめておきます)

まず、このブログからもおわかりのとおり、イルコモンズは、いろんな国や土地の、
それぞれにヘヴィな現実を描いたドキュメント・フィルムを好んでよく見るのですが、
今回の映画のように、その土地のことば(スワヒリ語)が分かる場合、字幕や通訳を
介さないぶん、ことばがストレートにはいってきて、キツイなぁ、と思わされました。
この映画でいうと、行きずりの客に殺された娼婦の女性が、残されたビデオテープ
の中で「タンザニアよ、タンザニア、おまえの名前は、なんて甘くて、素敵なのかしら」
と歌うシーンは、その歌詞と現実とがまるきり正反対なだけに、その唄のアイロニカル
な響きがズンと胸にこたえました。この強烈なアイロニーのシーンひとつとってみても
わかるように、この映画は、ノンフィクションのドキュメントフィルムでありながら、実は
映画的な修辞法が随所に施されていて、たとえば、在来種の魚を根こそぎ食い荒らし、
湖の生態系を破壊するナイルパーチは、資本主義のシンボルのようなもので、さらに
そのナイルパーチを運ぶ巨大な輸送機は「空飛ぶ鉄のナイルパーチ」のようなもの
として描かれています(それは、墜落して機首だけになった輸送機と、身の肉を全部
そぎ落とされて頭と骨だけになったナイルパーチの暗合からもみてとれる通りです)

▼タンザニアン・フライト・メア・ムービー_d0017381_520583.jpg
また、現地ではおそらく、かなりの程度まで「公然の秘密」である「兵器の密輸」の
真相にすこしずつだんだん迫っていくスリリングな展開づくりは、ジャン・ルーシュの
「シネマ・ヴェリテ」のそれを思わせるところもあって、これは「真実」を伝えるのに、
なるほど効果的な手法だと思いました。あと、この種のドキュメント映画では、所謂、
搾取工場(sweat shop)の劣悪な労働条件とか低賃金の実態を暴きだす場面が
織り込まれることが多いのですが、この映画にそれがなかったのは、少し意外でした。
それとこれは、ケニアで暮らしてたときに聞いた話なのですが、ヴィクトリア湖から
かなり離れたケニアのその地域では、ミステリアスな「うわさ話」として、ナイルパーチ
という魚は「いろんな魚の肉をつぎはぎして工場で製造されているらしい」という風に
語られてました。実際、ナイルパーチは、もともと科学実験として放流されたという
ことですし、また、現地の国立魚類研究所では、品種改良も行われてるようなので、
ナイルパーチを一種の「テクノ・フィッシュ」だと考えるのは、あながち、まちがいでは
なさそうですが、この映画では、そのへんのことにあまりふれられてなかったので、
ちょっと気になるところでした。しかし、なにはともあれ、この映画を見て、つくづく
思ったのは、タンザニアに飛来してくる輸送機の中は「決してカラではない」という
事実が寓話的に物語るように、資本主義のエコノミー・システムには一寸の余裕も
ムダもなく、余すことなく全てを利用しつくすのだということで、それがうみだす悲劇は、
ギリシャ悲劇なんかまるで比べものにならないくらい、過酷で、逃げ場がない、という
ことでした。映画の中盤、ナイルパーチを梱包する発砲スチロールのケースを火で
溶かしてそこから出るシンナーを嗅ぐこどもたちの姿をみて、そんな風に思いました。
つまり、そこでは余剰物が、さらに余剰の悲劇をうみだしているわけです。とはいえ、
こどもたちは、はらぺこのお腹を抱えては眠れないから、仕方なくシンナーを使うわけ
なので、そうなると、ますます出口なしです。最後に、あともうひとつ気になったのは、
この映画の舞台となったタンザニアのキリスト教地区では、たとえば、ウガンダの
「アリス・ラクゥエナ・ムーブメント」のような、所謂、「千年王国運動」や「カルト的
抵抗運動」は起こってないのだろうか、ということで、もし、そうしたものがあれば、
少しはまだ救いもあるのにと思いました。それに、そもそもタンザニアといえば、
かつてはウジャマーとよばれる社会主義国家建設の一大実験場であったのに、
その国がいまやこれほどまでに資本主義に食い物にされているのを目にすると、
ますますもって、グローバリズムのおそろしさを感じずにはいられず、おそろしさ
あまって、つい、こんな替え唄をつくりたくなってしまいます。

「キャピタリズムよ、グローバリズムよ、
 お前の名前は、なんとにがくて、おそろしいのか」

▼タンザニアン・フライト・メア・ムービー_d0017381_452415.jpgこのドキュメント・フィルムを見てしまうと、
マクドナルドのフィレオ・フィッシュ・バーガーとか
白身魚フライ定食なんかが、もしかすると、
のどを通らなくなるかもしれませんが、
ほかにも食べるものは、いくらでもあるので、
それを覚悟のうえで、ぜひ見てみられることを
オススメします。
by illcommonz | 2005-10-15 03:47
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