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いる・こもんず 【普通名詞】 01| ありふれて変なもの 02| 扱いにこまる共有物 03| 分けても減らぬもの 04| 存在とは常に複数で他と共にあり、狂えば狂うほど調子がよくなる
はじめに、ふた、ありき

イルコモンズ編
見よ ぼくら
四人称複数
イルコモンズの旗
(Amazon.comで
大絶版廃刊中)
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▼イルコモンズ「自民党とたたかう絶叫サックス」(別名「特定ミステリー反故ホーン」)
▼イルコモンズ「自民党とたたかう絶叫サックス」(別名「特定ミステリー反故ホーン」)_d0017381_1043591.jpg
[これまでのあらすじ]
 「第46回衆議院総選挙が12月16日即日投開票され、自由民主党が定数480人の過半数である241議席以上を単独で上回り、連立を組むとされる公明党と合わせて、参議院での否決法案を再可決することが可能な3分の2議席以上に当たる320議席をも上回って、3年3ヶ月ぶりに民主党から政権を奪還することに成功」した2012年の冬のこと。これからまた原発のこと、憲法のこと、集団的自衛権のこと、TPPのこと、沖縄の基地のこと、オスプレイのことなどをめぐって、宿敵・自民党との長いたたかいがはじまるだろうという思いにつきうごかされ、イルコモンズの「ギコギコ、トントン、カンカン」がはじまった。以下、開票の翌日のブログより無断転載。

▼イルコモンズ「自民党とたたかう絶叫サックス」(別名「特定ミステリー反故ホーン」)_d0017381_10442913.jpg
 こういうこともあろうかと、選挙期間中、家でひそかに製造していたものがある。不倶戴天の敵、自民党とたたかうための「デモ/抗議用改造楽器」である。

▼イルコモンズ「自民党とたたかう絶叫サックス」(別名「特定ミステリー反故ホーン」)_d0017381_10444465.jpg
 サビだらけで、キーが何箇所か壊れているため、ヤフーオークションで買い手のつかなかった安物のおんぼろアルト・サックスを、ひとつ3,000円で、ふたつ手に入れた。まずは修理と軽量化。パッドを交換し、いつものように、キーガード、ボウガード、プロテクター、B、B♭、Fシャープキーなどをとりはずず。これで500グラムくらい軽くなる。

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 ギコギコ、トントン、カンカン(以下省略、詳細は後日)

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 フロントベル方式のバリトン・ホルンのベルを持つバルト・サクソホルン。こちらはさらに音が大きく、ドス黒い。死にかけたヒキガエルの断末魔の叫びのような不吉な音がする。フロントベルなので、ねらった方向に音がよく飛び、命中率も高い。※註1

※註1:はじめは、デモ用に軽量化しようとしたはずが、バリトンホルンのベルをつけたため、結果として、通常のサックスよりずっと重くなってしまったことを、イルコモンズはすっかり忘れている。いっぽう、フレンチ・ホルンのベルをつけた「自民党とたたかうサックス初号機」(別名フレンチ・サックス)については、下記の記事を参照。

▼イルコモンズのふた。「自民党とたたかうサックス」(2012年12月17日)

  「自民党とたたかうサックス2号機」と名づけられたこのサックスは、以後、イルコモンズ自身の手によって(というか、ほかに誰がそんなことをするだろうか)、二度にわたる附則的な「改造」(第三者機関の審査によれば「ただの改悪」)がほどこされることになる。

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 まず、バリトンサックスやバスサックスよりも、もっと低い音を出したいと思ったイルコモンズは、トロンボーンのU字管3本をつなぎあわせて、異様に長い自作のネックをつくった。

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【失敗作】
▼イルコモンズ作「バルトンサックス」(2013年)

 この異様に長いネックによって、たしかに威容に低く、威容にどす黒い音はでたが、ネック部分にテーパー(広がり)がないため、音量はそれほどでもなく、また、あまりにも音が低(周波)すぎて、「これはもう楽器の「音」というより、工事現場の「振動」のようだね(苦笑)」と、師匠である大熊ワタルに指摘され、たしかにそうだなと思い、一回目の失敗。

※註2:世間ではあまり知られてないが、2013年にイルコモンズは、ジンタらムータの大熊ワタルに「弟子入り」をしている(実話)。弟子入りの動機は「どこまで楽器を改造したら破門されるのか知りたかったから」だという。なお、イルコモンズによれば、弟子になって良かったことは、大熊からおさがりのリードをもらえることで、イルコモンズはこれを自分で削りなおして大事に使っているという。

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▼弟子がつくったバルトンサックスを試奏して、「こまったなぁ...」とという顔をする大熊ワタル(師匠)。[撮影] こぐれみわぞう(おかみさん)

 それでも懲りないイルコモンズは、今度は「サーキット・ベンディング」(=電子機器のまちがった改造)のスキルを活かして、自作のファズとプリアンプ回路を内臓した「電気サックス」への改造にのりだす。そして、放射能を発見したマリー・キューリーの夫であったピエールが発見した「ピエゾ素子」を利用した連作「ピエールの時代」のひとつとして、2013年の夏に東京・渋谷のbonoboで「試奏展示会」(来場者に自由に吹いてもらう)をおこなったが※註3、イルコモンズが思っていたほど音は増幅されず、またファズによる音の歪みもいまひとつで、なによりもこれでは重すぎて、デモや抗議では使えないと判断し、二回目の失敗となる。

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【失敗作】
▼イルコモンズ作「電気サックス」(2013年)

※註3:改造したサックスからどんな音が出るかは、他人に吹いてもらわないと分からない、と考えるイルコモンズは、試作品をかならず人に吹かせるという悪癖がある。

 そして、2013年の冬、衆議院での「特別秘密保護法案」の強行採決と、自民党幹事長・石破茂の「絶叫戦術はテロと同じ」発言に憤激したイルコモンズは、「自民党とたたかうサックス2号機」を「絶叫サックス」に改造しようと決意。さらに、友人から教えてもらったフランク・ザッパの奇想「ミステリーホーン」※註4 からも着想を得て、連日連夜、国会議事堂前の抗議に参加しながら、2012年に誓った「脱自民運動」のための改造にとりくんでいる。※註5

※註5:「脱自民運動」については、2012年の同名のブログ記事を参照。この記事のなかでイルコモンズは、ヨーゼフ・ボイスの次のことばを引用している。

 「私のいう思考をしてはじめて、「未来の芸術」というものがはじまります。未来の芸術は、どんな人間でも行うことができます。この芸術は、現在、芸術といわれているものよりもずっと高い形式であり、社会の秩序を変えていく力を持っています。そして最後には、生きることそのものが芸術になるはずです。そうなっていない限り、私どもは、そうなってない状況に対して抵抗をしなければなりません。現存のものに対する抵抗こそが、実は芸術作品のはじまりなのです。」(ヨーゼフ・ボイス)

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▼「特定秘密保護法案とたたかうミステリーホーン」のつづき

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 ということで、三度目の改造作業にとりかかる。まず装着していた電気部品を全部とりはずす。9Vのバッテリーも含めると、これで500グラムほど軽量化できた。「電気サックス」化の失敗から学んだことは、デジタル式の電子(エレクトロニクス)化はものを軽くするが、アナログ式の電気(エレクトリック)化はものを重たくするということとと、「むやみに電気にたよるな」ということである。

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 LEDや可変抵抗器を埋め込んでいた孔が残った。

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 サックスを切断したときの余りの真鍮板を板金加工する。

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 ろう付けする。失敗から学んだことを忘れないように、わざと大きめのパッチをあて、失敗の痕跡を残す。

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 孔も全部ふさがずに、別の利用法を考えてみることにした。この孔をなにかに使えないだろうか?

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 これはどうだろう。こうすると、ここに■■■■■■■■■■■■を挿すことができる。だが挿してどうするのか、もちろん、吹くにきまっている。■■■■■■がなにかはもちろんミステリーである。

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 「むやみな電気化」(進化)に背をむけたことのあかしに「スチームパンク風」あるいは「鉄男」風のパイプを配管する。このパイプがつくる乱れた息の流れがサックスの音にどんな影響を与えるか、もちろんこれもミステリーである。

 さっそく、国会前の抗議で、吹いてみた。


▼「2013.12.02 特定秘密保護法反対 - ドラム隊〈国会正門前〉 」

 まるまる2時間以上、ほとんど休憩なしに、オーバーブローとスラップ・タンギングとグロウルを多用して吹くと、唇よりも先にリード(この日は2半の薄めのリードを使用)がへたばることがわかった。また、たくさんのドラムが鳴っている場所では、まだこれでも音がちいさい。※註6

※註6:実はこの日、お母さんと一緒によくデモや抗議にくる、ちいさい女の子に近寄って、このサックスを吹いてせたら、びっくりして泣いてしまった。たぶん、歩いて近づいてくる大きなベルが、なにか別のもの(楽器のおぱけ?)に見えたのだろう(上の動画のなかでもまだおびえている)。ごめん。

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 音がちいさいので、アルト用ではなく、テナー用のマウスピースとリードを挿すことにした。オクターヴ・キーのトーン・ホールのあたりまで深く挿しこめば、だいたいE♭になる(抗議のコールをもりあげ、抗議の絶叫をすることが目的なので、音程は気にしない。というか、もともと音感がわるいので、気にならない。

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 そのほか、オーバートーンをマルチフォニックス(複数の倍音を同時に発生させる)で出しやすくするための特殊な指使いとキーの調整をする。ふつうは、気密性を高める方向で調整するが、今回は「機密」や「漏洩」が問題なので、わざと漏洩させる方向で調整する。

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▼イルコモンズ作「絶叫サックス」別名「特定ミステリー反故ホーン」(2013年)

 ということで、連日連夜、国会前で試行錯誤しながら改造中の「絶叫サックス」別名「特定ミステリー反故ホーン」。こんなガラクタで、いったい、なにをしたいのだと問われたら、そのこたえはひとつしかない、抗議である。そして、抗議とその音については、岡本太郎の「芸術の三原則」と同様、これが原則だと思っている。

 うまくあってはならない
 ここちよくあってはならない
 きれいであってはならない

 だからこそ、抗議の音は「おおきな音」で、抗議の相手に「畏怖の念を与える」(石破茂)くらいの「叫び」や「絶叫」でなければならない(ただし、ちいさなこどもの前がいるところでは、なるべく避けたほうがいい)。おおきくて、きたないだけの音は「電気じかけの楽器」でも出せるが、抗議の「叫び」や「絶叫」はやひり人力と肉声に限る。というわけで、腹の底からこみあげてくる怒り、憤怒のむかつき、そういう心の状態と直結した音が出せる「魂のメディア」としてのサックスをつくる試みはつづく。※註7

※註7 イルコモンズの抗議の音についての考え方については、下記の記事もあわせて参照。
▼【警笛】 http://illcomm.exblog.jp/20018802/
▼【ブレーキ】 http://illcomm.exblog.jp/20026519/
by illcommonz | 2013-12-04 11:50
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