はじめに、ふた、ありき
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▼会田誠展「もう俺には何も期待するな」 【会期】2014年1月29日(水)-3月8日(土) 11:00ー19:00 【会場】東京・新宿ミヅマアートギャラリー 東京都新宿区市谷田町3-13 神楽ビル2F ▼会田誠「土人@男木島」(2013年 ビデオ 約50分) 「本展は、会田誠初の監督作品となる映像作品をメインに構成します。2013年夏、瀬戸内国際芸術祭参加のため、会田は約1ヶ月半男木島に滞在し、本人が一人でカメラを回し続けました。本作《土人@男木島》は、過疎化が進んでしまった小さな島に謎の先住民(土人)が現れたという設定で物語が進行します。架空のクイズ番組のレポーターが島を訪れ、クイズを出題するという形式で土人たちの生活が浮き彫りになっていきます。土人に扮するのはアウトドアが好きな若手アーティスト達。会田曰く、「大人の夏休みに行き当たりバッタリで撮った映像。アートと思って肩肘張らず、楽しんで見てもらいたい」とのこと。本作品の上映時間は約50分です。午前11時より毎時00分から上映を開始いたしますので、是非その時間に合わせ、ご来廊いただければ幸いです。(1日8回、最終上映開始午後6時)。またギャラリー奥のスペースでは、挿絵など、この1年で会田が手掛けた仕事がご覧いただけます。」 --------------------- 自分が監修した「アトミックサイト」展を別にすれば、この三年間、現代美術の展示や個展を見に出かけたという記憶がほとんどない(故・東谷隆司の展示さえ見逃してしまったくらいである)。もしかすると、一度か二度くらいは、なにか見にいっていたかもしれないが、まるで記憶がない。いずれにしても、わざわざ初日に見にでかけるなどということはなかった。そんな自分がすっかり重くなった腰をあげ、わざわざ初日に見にいったのが、この会田誠の個展である。これは見にいきたいと思った。自分をふと、そんな気にさせたのは、「もう俺には何も期待するな」というタイトルと「土人」の二文字である。結論からいえば、この展示をみて、ほとんど消えかけていた現代美術への関心をとりもどしたのだが、とはいえ、タイトルのとおり、この展示に何かを期待してはいけない。会田誠に何も期待してはいけない。映画「土人」には、モラルも教養も知性も正義も教訓も意味もメッセージも愛も怒りもなにもない。つまり近代以後の映画やアート、あるいは、危機の時代の映画やアートにどうしようもなく宿ってしまうはずのものが見事にない。それは会田が意図的に削ぎ落としたり否定しているのではなく、ただ単に「ない」のである。だから、そこには何の凄みもなければ、超克のドラマもない。土人たちとの交流を通して語られる文明批評的言説は、単に映画を終わらせるためだけの、つけたしにすぎず、本来そこに宿るはずのはずのなにかがない。「ただ単にない」としか云いようのない、この居心地のわるい感じは、会田誠の仕事に一貫しているもので、うまく言葉にできない、このもどかしい感じを味わいたくて、会田誠のつくるものを見にいくのだが、今回の展示では、会田自身がそれを表現している言葉を見つけた。「ふるさとは NO FEELING」という壁画のタイトルがそれである。「ふるさとは NO FEELING」は、いかにも安物の金紙をはりつけた巨大な屏風に、凡庸な野山の風景と放射能マークをライヴペインティングで描いた、いわゆる「3.11以後的」な作品で、会田が好む素人の描く「標語ポスター」のように、画の上に「ふるさとは NO FEELING」となぐり書きされている。そして、この壁画には「3.11以後的」なアートにどうしようもなく宿るはずのものが、「3.11以後的な作品」であれば当然そこに期待してしまうものが、やはりない。削ぎ落としたり否定しているのではなく、ただ単にないのであり、会田はその欠落を「ふるさとは NO FEELING」というタイトルで見事に表現している。見事とはいえ、「ふるさとは NO FEELING」というのは、日本語としても英語としても不恰好で居心地のわるい表現である。主語である「ふるさと」が「無感覚」なのか、ふるさとに「無関心」なのかよくわからない表現だが、「NO FEELING」の語は、会田のつくるものに、あるべきものがないことの告白あるいは弁明として読める。そう、会田誠は「NO FEELING」であり、すべてにおいて「心がこもってない」のである。それは虚無主義でもなければ諦念主義でもなく、あえて居心地のわるい日本語にすれば、単無主義である。そしておそらく「ふるさと」とは日本のことであり、「土人」とは、近代以後、そして3.11以後ですらまだ、近代人なら持っているはずの正義や倫理や道徳や超克への意志を持ちそこねている、いまだ「市民」にも「近代人」になりきれていない、会田もふくめた、私たち日本人のことではないだろうか。とはいえ会田が、浅田彰や大塚英志のように、「土人」という言葉で、それを批判し蔑んでいるのでないことは、映画をみればわかる。心こそこもってないが、映画はむしろ「土人上等!」と云っている。だがそれは決して、開きなおりやポジティヴ・シンキングではなく、ましてや近代以前の日本人の源流なるものに対する礼賛やロマンでもなく、そこには依然として、なにかになりきれない「なりきれなさ」からくる一抹のエレジー(哀歌)がある。「誠(まこと)」と名づけられたものの、「誠の人」になりきれない会田の業(ごう)ともいうべき、かなしみがある。会田がつくるものをふと見にゆきたくなるのは、会田のエレジーに耳をすませたいからなのかもしれない。 [追記] これを書いているときにちょうど、以前、村崎百郎について書いた文章を、村崎のアーカイヴ展で使いたいという依頼がきた。その文章を読みよみなおしていたら、「土人」の会田と「鬼畜」の村崎には、どこか似ているところがあるような気がしてきたので、転載して追記しておけば、会田は「近代と3.11以後のアートに徹しきれないこと」を自らの業としてひきうけた、「日本/土人的な、あまりに日本/土人的な作家である」。
by illcommonz
| 2014-01-31 21:36
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