▼「3.11以後の「カオスモス」
「いまは、マスコミも、経済界も、官僚の世界も、日本人が一度体験した目覚めを、また眠りこませようと思って、もとの秩序に一所懸命もどそうとしてますね。テレビはあいかわらずバラエティ番組を流しつづけて、電力を消費しながら、ニュース番組のなかでは力を節電しましょうって言うとかね、矛盾に満ちている。もとの秩序にもどしてしまおうとしている。だけど、3.11以後、日本人が体験してきたのは「カオスモス」なんですよ。今まで戦後、つくってきた「コスモス」が大きく揺らいで、そこに三陸の震災の体験や原発の事故という「カオス」が一気に導入されてきた。その「カオスモス」を抱えて、いま生きているわけですね。ここからなにかをつくりだしていかなければならない。それを早めに、元のコスモスにもどしちゃえということは、僕らは拒否しなきゃいけないですね。そういう意味では、いままでアートというのは、個人の体験や個人的な創造としてやってきたカオスモスというのが、大きく社会的な場面にひきだされたんだと思うんですね。社会全体がこれからはカオスモスを実践していかなければならないわけだから、アートが社会化してくる重要な時期にきている。」(中沢新一)
【カオスモス】(かおすもす)
「フランスの哲学者ジル・ドゥルーズとフェリックス・ガタリの造語。「カオス(混沌)と「コスモス(秩序)」の合成語、あるいは、カバン語で、「混沌とした調和」を意味する」