はじめに、ふた、ありき
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・・・というのが、ゴダールの「ヌーヴェルヴァーグ」を観るときの
お約束なので、昨晩は上映がはじまる1時間近くも前に劇場に 着いて、開場と同時にピンポンダッシュし、最前列やや右寄りの 席をすかさず確保しました。てっきり、その席をめぐる熾烈な 争奪戦があると思ってたのですが、意外にも誰もそこに座ろう としないので、ちょっと拍子抜けしました。 で、どうして右側の席なのか、というと、ヌーベルバーグ時代の ゴダールは、トリュフォーやリベット、ロメールなんかとおなじ ヌーベルバーグ右岸派(セーヌ河をはさんで右岸に彼らの活動 拠点だった「カイエ・デュ・シネマ」編集部があったことに由来する 命名)に属していたからだ、という、おそらくは本当にただそれだけ のパスティーシュな理由でゴダールは、この映画の全編を通じ、 (劇中に出てくるゴヤの「裸のマハ」に至るまで)被写体に対するカメラ の位置を一貫して右寄りに据えつけているため、映画の中の大半 のシーンが、画面のむかって左側の奥に消失点がくるという、 いわゆる、右びらきの遠近の図になっていて、これを右寄りの席 (あるいは右寄りの位置)から左斜めの角度で眺めると、ちょうど カメラアイとぴったり同じ視点になって、すこぶる画面の見通しと 見晴らしがよいからです。 ちなみに、参考までに、アマゾン・コムのレヴューを見てみると、 「『ヌーヴェルヴァーグ』は駄作だ、と私は思う。明らかに詩的 であることを志向しつつも、映画は観客に快楽を許さない。 この居心地の悪さは意図的なものか?」という記事があります が、おそらくこのレヴュワーの方は、映画館で左側の席に座っ たか、あるいは、ビデオの正面に座って見たせいで、居心地が 悪かったんじゃないかと思います。右側に座って見ると、これほど 見ていて見心地のよい映画はありませんし、しかも今回のように 爆音で観ると、文句なしの、音響映画の傑作だと思います。 で、ようやく、ここから本題ですが、爆音で観る/聴く「ヌーヴェル ヴァーグ」は、誇張ぬきで、凄まじいものがありました。もともと この「ヌーヴェルヴァーグ」と題された映画は、その題名どおり、 ヴァーグ(波)が映画の重要なカギとなってる映画なのですが、 爆音で観るそれは、寄せてはかえす波どころの話ではなく、 疾風怒涛のグラン・ヴァーグ、巨大な大津波のような猛烈な ドラマに化けてました。一般に、物語のドラマティックな展開を、 「運命の波に翻弄されるがごとく」と表現しますが、この映画は まさにそれを字義通りに映画化したもので、映画の終盤、 シェーンベルクの曲をバックに、波が岸辺に寄せてくるように、 それまで左から右へと静かに水平移動していたカメラが、 あるところでピタッととまり、そこから波が返してゆくように、 カメラが音と光と共に、右から左にリバースしてゆくシーンは、 何度も見ても背筋がゾゾゾッとするのですが、爆音で観ると、 そのゾゾゾゾゾッが、ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾーっと 何倍にも増幅され、「海の波がすべて同じように現在も過去も やがてひとつとなる」という言葉にむかって、そこから急展開 してゆくドラマの波にひきずりこまれていってしまいそうな 感覚を覚えます。これまではビデオを通して、もっぱらそれを 目と頭で理解していたのですが、今回はそれを耳と体とで 体験したような心地がしますので、この作品に関しては、 爆音と大画面の効果は絶大だったと思います。落雷のシーン なんて冗談ぬきで、劇場全体の空気がズズズーンと震えて ましたし、バンドネオンの音の洪水も凄まじいものがありました。 あと、この作品の中で一番好きな、金持ちたちの昼食会の席で ウェイトレスがぶちキレて罵倒と呪いの科白を吐くシーンも 大音声で見ると、より感動的でした。もし、まだこの作品を ご覧になってない方は、ぜひこの機会に劇場に足を運んで みることをおすすめします。もちろんその時は、映像と爆音の 波を存分に浴びることのできる最前列右岸で。あと例によって、 R・チャンドラーの小説なんかからの引用が随所にありますが、 それはまぁ放っておくとして、最低限「太陽がいっぱい」だけは 見ておかれた方が確実に愉しめると思います。さらにいえば、 いっそのこと、ビデオかDVDで「ヌーヴェルヴァーグ」を先に 見ておいて、そのストーリーやからくりをある程度頭にいれた 上で、右側の席から見ると、画面右上に出る字幕が視界から 消えて、字幕に邪魔されずに、画面と音だけに集中して観る/ 聴くことができます。そうやって見るとこれはかなりキますよ。 ともあれ、爆音と映像の波がおしよせる最前列波打ち際の 「右側にキをつけろ」ということで、爆音ゴダールナイトは、 今週の28日(金)まで毎晩やってますので、ぜひ、どうぞ。
by illcommonz
| 2005-10-26 02:07
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