「ここには猿人がうようよしているが、ムルク族も暮らしている。ここでは彼らのことを、ヤプー族と呼ぶことにしよう。それは彼らの本性が動物的であることを読者に忘れてもらいたくないからだ。彼らは、木の実や爬虫類が主食で、猫や蝙蝠の乳を飲み、手づかみで魚を捕る。呪術師や国王たちの死体を生でほおばるのは、その力を自分のものにするためである。種族は、王によって統治され、その権力は絶対的である。王妃は王に会うことすら許されていない。四人の呪術師たちがいるが、
実はこの数は、彼らの計算における最大数である。彼らは指で「1、2、3、4、そして、たくさん」と数え、親指から無限がはじまる。」(ホルヘ・ルイス・ボルヘス作「ブロディの報告書」)
▼
「官房長官 合憲論学者「数ではない」 安保法案 与党、会期延長検討」
「他国を武力で守る集団的自衛権の行使を柱とする安全保障関連法案に関する衆院特別委員会は十日午前、関係閣僚が出席して一般質疑を行った。菅義偉官房長官は二百人以上の憲法学者が安保法案を違憲だと批判していることについて「数(の問題)ではない」と述べ、合憲の主張が少数派であることを認めた。その上で、合憲と主張する憲法学者三人の実名を挙げた。 三人は百地章日本大教授、長尾一紘中央大名誉教授、西修駒沢大名誉教授。菅氏は「憲法の番人は最高裁だから、その見解に基づき法案を提出した」と述べ、安保法案は合憲だと重ねて主張した。菅氏は、衆院憲法審査会で憲法学者三人が安保法案を「違憲」と批判したことを受け、四日の記者会見で全く違憲でないと言う著名な憲法学者も
「たくさんいる」と反論していた。」(東京新聞 2015年6月10日 )
ボルヘスが創作したヤプー族の無限は親指からはじまるが、現政権の官房長官の無限は、
「いち、にい、たくさん」と中指からはじまるらしい。これからは菅のことを「ヤプー長官」と呼ぶことにしよう。