
というリチャード・パワーズの
ポストモダン小説のもとになった
アウグスト・ザンダーの写真展と
それと同時開催されていた
現代ドイツの写真展を
見てきました。
「アウグスト・ザンダー展」
「ドイツ写真の現在―
かわりゆく「現実」と向かいあうために
2005年10月25日(火)-12月18日(日)
東京国立近代美術館
このたった一枚の写真をもとに、壮大なスケールの空想物語を書ききってしまった
パワーズの小説はめっぽうおもしろいので、ぜひ一読をおすすめします。もしかすると
見落としたのかもしれませんが、会場ではこの本の紹介がなかったようなので、
かわりにここで紹介しておきます。
そのパワーズの作品のもとになったザンダーの写真をこれほどまとめて見たのは
はじめてで、これまたすこぶるおもしろかったです。どこがそんなにおもしろかった
かというと、同じ国にすむ同じ時代の国民なのに、その階級や職業、年齢、性別、
居住地によって、ほんとうに人の顔つきや身なりがまったくちがうというところで、
そういう社会的ポジションごとの職業倫理とか道徳とか気質とか誇りとか慎みとか
嗜みとかよろこびとか悲哀とか、そういうものがすっかり消えてしまって、誰が何を
する人なのやらまるきり見分けがつかなくなってしまったツルペタのスーパーフラット
社会からみると、どことなく演劇的な感じがし、まさにアイデンティティというのは、
社会的な配役として演じられるものなのだなということがよくわかります。


また、農民からはじまって、
職人、労働者、役人、知識人、
政治家、芸術家ときて、その
おしまいに「最後の人びと」
というカテゴリーだけがあって、
そこに「愚者、病人、狂人、死者」
の写真が一枚もないのが、実に
「社会批評的だなぁ」と思いました。