ねこぢるを知らないひとのために、二〇世紀後半のロンドンの労働者階級出身の
こどもたちのある食事風景を例にして、「ぶえーまじーや」を説明します。
左手前のシドくんは、中毒で味がわからなくなっているので、むしゃむしゃ食べてます。
でも、あまりおいしそうではありませんね。また、あまりしあわせでもなさそうです。
右の奥のグレンくんは、生まれてはじめてピザというものを注文し、口にいれてはみた
ものの、どうも違和感をかくせないようで、「ぶえーまじーや」という顔になってます。
右手前のポールくんは、どうやら食わずぎらいのようで、はじめて見たピザをじっと観察し、
ためすがめつしただけで、結局、一口も食べませんでした。ことによると、保守的な家の
ひとから「むやみに外で買い食いをしてはいけないよ」といわれていたのかもしれません。
ところで、このピストルズのメンバーの中で、「いただきます」と「ごちそうさまでした」が
ちゃんと云えたのは誰でしょう?こたえは、このテーブルに座ってないライドン家の
ジョンくんです。ジョンくんの家はとても躾がきびしく、ステージでは暴れん坊だった
ジョン君も普段はとてもお行儀がよかったようです。で、ここでまたしつこくマクドナルドの
話ですが、かりに四百歩ゆずって、マクドナルドのメニューの中にはおいしいものがある
としても、人前で堂々と「マクドナルドが好き」と広言する人はやはりあまり信用できない
気がします。この人には趣味がないのではないか、とその趣味を疑いたくなります。
イルコモンズは偏屈なのでそう思います。いっぽう、ファミレスでもカフェでも学食でも、
ごはんを食べる前にパッと手をあわせ、早口で「いただきますっ」といって、ごはんを
モリモリ食べはじめる人がいますが、あの「いただきます」の、すっと立った手のかたちを
みると、エリア圏外で携帯のアンテナがピンと3本立ったときのような感じがして、年齢・
性別・職業・趣味を問わず好感をおぼえ、それだけでその人物が信用できそうな気が
します。それがたとえ「いただきマンモ~ス」でも、ついつられてこちらまで手を合わせ
たくなります。イルコモンズは偏屈なのでそう思います。偏屈なイルコモンズがそう思う
のはたぶん、アフリカのイスラム教徒のところで長く暮らしていたせいで、そのときに
そんなふうにしつけなおされたのだろうと思います。