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いる・こもんず 【普通名詞】 01| ありふれて変なもの 02| 扱いにこまる共有物 03| 分けても減らぬもの 04| 存在とは常に複数で他と共にあり、狂えば狂うほど調子がよくなる
はじめに、ふた、ありき

イルコモンズ編
見よ ぼくら
四人称複数
イルコモンズの旗
(Amazon.comで
大絶版廃刊中)
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▼京都書院リターンズ
▼京都書院リターンズ_d0017381_11223559.jpg▼京都書院リターンズ_d0017381_11225411.jpg「1989年に発売開始された『アートランダム』全100巻が、
この7月に完結する。八〇年代以降の現代美術の優れた
作家からピックアップ。しかもお金のない人にこそ買っても
らおうと、すべてのスタッフおよび出版社がいっさいの利益
を求めずにクオリティを追求した。」(『ELLE』)

それから数年後の1999年、その出版社は倒産した。倒産のニュースがネットに流れた日、
在庫はすべて債務処理のため店頭から回収され、さっそく神保町の古書街に流出品が
放出されたが、そこにはすでに『アートランダム』はなかった....倒産した出版社の名前は、
京都書院。編集を担当したのは都築響一。現代美術における「サンリオSF文庫」ともいえる
『アートランダム』は1980年代の失われた遺産となった...

はずだったのですが、どうやらその後、京都書院の債権処理がうまく運んだようで、一時期
は入手不可能になっていた「アートランダム」シリーズがまた手に入るようになったようです。
店頭での販売はないようですが、下のサイトからオンライン注文できます。

京都書院ヴァージョンB / 京都書院

▼京都書院リターンズ_d0017381_1340981.jpg
ということで、全100巻で完結するはずだった
同シリーズの刊行中、76巻目に予定されていた
バスキアが死んだため、やや遅れて1992年に
101巻としてバスキアの画集が追加出版された
とき、それとあわせて追加リリースされた、同シ
リーズの最終巻(102巻)ウィリアム・バロウズの
「PAPAER CLOUD/THICK PAGES」(1992年)
を買い求めました。


「PAPER CLOUD」と名づけられたファイル・フォルダー・ペインティングのなかには、
のちにソニック・ユースが「NYC ゴースト&フラワーズ」(2000年)のジャケットに
使った「X-Ray MAN」(1992年)の別刷ヴァージョンをみることができます。

また「アヴァン・ガーデニング」についての原稿を書くために取り寄せた75巻の
「アウトサイダーアート2」には、都築さんの「珍世界紀行アメリカ編」や
「Roadside USA」の原型と思しき「奇想の庭」の数々を見ることができます。

同じく第71巻のロバート・ロンゴの作品集では、のちに岡崎京子が『リバース
エッジ』で引用し、椹木野衣の「平坦な戦場でぼくらが生き延びること」のタイ
トルのもとになり、終わらないスーパーフラットな日常という世相を予言していた
かのごときウィリアム・ギブソンの「the BELOVED(Voice for THREE HEAD」
の原テキストを読むことができます。

それにしても驚くのは、都築さんの先見の明で、1989年の第一回配本分の
第5巻は、ヴィンセント・ギャロの作品集で、第81巻にはクシュトフ・ウディチコの
ホームレス・ヴィークル・プロジェクトがフューチャーされていました。

ウディチコは「プロジェクション・イン・ヒロシマ」や第一回横浜トリエンナーレの
「ティファナ・プロジェクション」で知られるポーランド出身の社会派の作家で、
「プロジェクション・イン・ヒロシマ」については、このプロジェクトの公式サイトで、
そのドキュメント映画の予告篇をみることができます。

▼京都書院リターンズ_d0017381_1256486.jpg
岸本康監督
「プロジェクション・イン・ヒロシマ」
予告篇 (2分31秒 24.9M WMV)

2000年 70分 カラー


かたや「ホームレス・ヴィークル・プロジェクト」でウディチコはこう書いています。

▼京都書院リターンズ_d0017381_1322667.jpg「私の芸術活動は、都市体験に対する批判的次元の確立をねらった、
都市への介入行為であると信じたい。(...) 建築環境は、われわれを
堂々めぐりに投げ込み、没意識化させ、視線の自由を奪い、無意識を
操り、欲望をあらわにし、権力関係を隠蔽し神話化し、文化的で美的な
背景の周到な見せかけのもとに、空間の社会環境を支配し管理しようと
たくらむ者たちのためにつくりだされた有効な道具となり、イデオロギー
の媒介物と化すのである。(...) われわれはこれに立ち向かうため、
都市行政の、そして不動産のものとなりはてた土地をベースに行動し、
コミュニケーションの媒介としての「土地活用」を行わなくてはならない。アーティストは、
社会の一部をなしながら視野の外に追いやられている事実や問題をとりあげることで、
再開発され高級化する都市の社会生活に対して批判や刺激を与えることができる。(...)
現代都市がまさに不動産産業の美意識による空間的統合の支配化にあるなら、その
「環境=文化」から締め出しをくらった人々は、それに対抗し得る彼ら独自の建築物を
必要とする。私がデヴィッド・ルーリーと取り組んでいるホームレス・ヴィーグル・プロ
ジェクトは、人を追い立てる建築に対する、追い立てられた人々の建築というレジスタ
ンスの表現である。それは経済によって張りめぐらされた都市社会の障壁を、文字
どおり突抜けるために構想された。このヴィーグルが空間に侵入することが、ホーム
レスと非ホームレスとのコミュニケーションを誘発する手段ともなり得るのだ」


「プロジェクト」と「プロジェクション」の「プロジェ」には、「なげいれる」「なげかける」と
いう意味があって、ウディチコの「プロジェ」は一貫して、社会の具体的な場と問題へ
のアートの「なげかけ」となっていて、それは抑圧や閉塞に解放の突破口を与える
「プロジェ」となっています。バブルが終わり、建築ブームが去り、監視社会の到来
と経済格差による障壁がようやく意識されるようになった2006年の今ならいざしらず、
バブル狂乱の時代のさなかに、こうした作家をきちんとフォローしていたこのシリーズの、
時代の行方を見据える見識の高さに脱帽する思いがします。

▼京都書院リターンズ_d0017381_13533279.jpg
「ぼく達は何だかすべて忘れてしまうね」という岡崎京子の
ことばの通り、何でもかんでも凄まじく忘れ呆けてしまう
時代の中で、15年の時を越えて甦ってきたこのシリーズを
もういちど再点検し、いま必要なアートというのはどういう
アートなのかを、100+2冊の遺産の中から掘り出して
みたいと思っています。
by illcommonz | 2006-01-07 13:51
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