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いる・こもんず 【普通名詞】 01| ありふれて変なもの 02| 扱いにこまる共有物 03| 分けても減らぬもの 04| 存在とは常に複数で他と共にあり、狂えば狂うほど調子がよくなる
はじめに、ふた、ありき

イルコモンズ編
見よ ぼくら
四人称複数
イルコモンズの旗
(Amazon.comで
大絶版廃刊中)
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▼温故&痴新ということ
▼温故&痴新ということ_d0017381_21591724.jpgいささか、しつこいですが、これから
書くことは特に大事だと思うので、
しぶとく書いておきます。まず、
←これは日本ローランド社が設立した
翌年の1973(昭和48)年に発売された
TR-66(Transistor Rhythm66)という
リズムボックスで、後にデトロイト系
テクノのリズムトラックづくりに欠かせない
定番機種となったリズムマシンTR0808
(通称ヤオヤ)の原型にあたるものです。

キック、スネア、タム、ハイハット、シンバル、コンガの 6音色で、基本となるリズムパタンは
27通りです。もともと電子オルガンの伴奏用として開発されたもので、この後に出たCR
(Compu-rythm)シリーズのように、自分でプログラムを組むことができないため、初期の
テクノポップのバンドもこれを演奏に使うことは殆どありませんでしたが、ブレイクビートと
組み合わせて、こんなふうに鳴らすことができます→デモ音源をきく

このデモは「ヴィンテージ・シンセ・エクスプローラー」という海外のサイトにアップしてある
もので、たぶんサンプリング音源を使ってつくったものだと思いますが、イルコモンズの
家にある現物も、コンセントをいれて、アンプにつなげば、これと同じ音が出ます。

今から33年前も前の電化製品ですが、全く何の問題もなく、「水道をひねれば水がでる」
くらいの感じで音が出ます。つまりは、い・ま・で・も・ち・ゃ・ん・と・つ・か・え・る・わけです。
しかも、たちあがるのに何十秒とか何分とかかかったりしませんし、音を出してる途中に
フリーズしたりすることもないので、再起動する必要もありません。それどころか、これまで
一度も故障というものをしたことがありません。

「そんなの当たり前だ。それはメカニズムが単純で、仕組みがシンプルだからだ」と
云われるでしょうが、まさにそのとおり、たしかに機能こそ限られていますが、その分、
きわめて堅牢で安定したつくりになっているこのリズムボックスには、およそ欠陥らしい
ものが見あたらず、製造から33年が経った今でも、まったく支障なく使えるという点
からして明らかな通り、このリズムボックスは「電子楽器」のプロダクツとして非常に
高い「完成度」と「持続可能性」(←LOHAS"のス"の部分)を備えているわけで、
ある意味、これほど「安心」で「信頼」のおける「電気用品」はないのではないかと思う
わけです。簡単にいえば、それは「しっかりつくられていて」「よくできてる」わけで、
「持続可能性」、つまりモノとしての「寿命」もながい。

▼温故&痴新ということ_d0017381_19243323.jpgにもかかわらず、単に「昔のものだから…」
という理由で「疑わしきモノは罰せよ」と
「危険分子扱い」されるのは、どう考えても
納得のゆかない話で、なによりも、この
「昔ものだから…」という見方は、ある大切
な事実を見落としているように思います。
というか、その事実が知れると都合の悪い
人たちがそれを「なかったこと」にしようと
画策してるのではないかとすら思えます。

(画像は1938年11月の「水晶の夜」のもの)

さて、いよいよここからが本題で、「今のものは安全で、昔のものは危険」というのは、
むしろ話はあべこべではないかと思うのです。

たしかに今の電気用品の方が、機能も豊富で、操作も簡単になっていますが、
その分、メカニズムがおそろしく複雑になっていて、仕組みもややこしくなり、
プロダクツとしての「堅牢さ」や「安定性」はかなりあやしくなっています。また、
次から次に新製品や新機種をリリースし、それを短期間で大量に売りさばき、
短いサイクルで買い替えて、償却させることをコンセプトにつくられているため、
プロダクツとしての「完成度」や「持続可能性」は決して高くありません。特に
ひどいのはCDプレーヤーやMDプレーヤーの類で、実際、5年もったためしが
ありません。2年くらいたつと、読みとりエラーやスキップが頻発するようになり、
こわくて現場での実演にはとても使えません。さらにいえば、その普及からもう
かれこれ20年以上が経った、い・ま・で・も・ま・だ・パソコンがあ・た・り・ま・え・
のようにフリーズしたりクラッシュするのは、そもそもこのパソコンなるものが、
テクノロジーとしてまったく成熟しきれていないからで、プロダクツとしては、
不完全で未完成なものだからです。

▼温故&痴新ということ_d0017381_18195565.jpg
ラジオやアイロンのような成熟したテクノロジーはフリーズしたりクラッシュしたり
しません。また、いやしくも「商品」として販売したプログラムに、次から次にバグやら
不具合が見つかり、そのたびに、それを修正するためのアップデートやらヴァージョン
アップやらを行わないといけないというのは、基本的にプロダクツとしては「失格」で、
欠陥のある不良品を販売していると云えなくもありません。花森安治なら「恥知らず」と
罵倒したことでしょう。

また、最近は少しはましになってきたようですが、一時期の携帯電話のこわれやすさ
といったら、本当にひどいものでしたし、しかも、まだ依然として高くつくバッテリーの
せいで持続的使用ができないからくりになっています。それにひきかえ、昔のものは、
一概にそうだとは云えないにしても、今のものに比べれば、ずっと頑丈で、壊れにくく、
また丈夫で、長持ちするようにつくられていました。「あべこべだ」というのは、つまり、
このことです。今からみればいかにローテクで単純でも、昔の家電製品には、まず
「丈夫で、壊れにくく、頑丈で、長持ちし、できれば、一・生・使・え・る・も・の」という
コンセプトと設計思想があって、ある時期までの昔の家電の方がプロダクツとしての
クオリティや完成度は高いのです。それは買い手がそういうものを望み、つくり手もまた
それに応えるかたちでものをつくっていたからで、大量生産・大量消費の流れの中で、
そうした「ものづくり」がどんどん廃れてゆくなか、電子楽器と一部のオーディオ製品の
分野では、確実にある時期までは、そうしたものづくりが行われていたのです。
そこでもう一度、リズムボックスを見てください。

▼温故&痴新ということ_d0017381_1915147.jpgご覧のとおり、筐体にはしっかりしたつくりの
木の箱が使われていて、たとえスピーカーや
アンプにぶつけたところでびくともしません。
大人がひとり箱の上に乗って踊っても何とも
ないくらい頑丈にできてます。丈夫な分、重量
があるので運ぶ時はたしかに重たいのですが、
オルガンの上に置いてもぐらついたりせず、
肘をぶつけてオルガンからすべり落ちたりする
こともないので現場でも安心で信頼できます。

パネルのツマミやボタンも手ごたえのある、がっつりしたものがとりつけられています。
厚みのないフラットなものではなく、どれも前にぐっとつきだしているので、たしかに
「押した」「回した」という操作の実感と感触が指から伝わります。イルコモンズは
電気工学にあまり強くないので、基盤回路の詳細まではわかりませんが、ずっしりと
重みのあるボックスをひざの上に抱きながら、綿棒やふきんで「すすはらい」をしてると、
筐体のたてつけやパネルのとりつけが「しっかりしていて」「ちゃんとつくられている」
ことがわかります。

つくられてから30年以上経っても、まだどこも壊れていないし、このままいけば本当に、
一・生・使・え・るかもしれません。いや、もしかするとイルコモンズより長生きするかも
しれません。そのチャカポコチャカポコというリズムパタンや音色こそ、アナクロなもの
になりましたが、この先また音楽の流行が変われば、いつでもまた現場に復帰できる
野太い響きとダンサブルな弾みをもっています。「BPMとグルーヴこそ変わったけど、
ダンスならまだ踊れる」とでもいうように、チャカポコチャカポコと鳴っているのを聞いて
いると、久しく覚えたことのない、モノへの「愛着」や「敬愛」の念すら感じ、それは
「お払い箱にされるなんて、まっぴらごめんだ、だって、まだ、ちゃんとこうやって
動いてるんだから」と云っているようにも聞こえます。

▼温故&痴新ということ_d0017381_18231496.jpg
不幸なことに、あらかじめ壊れやすいようにつくられたモノや、未成熟で
不安定なプロダクツばかりに囲まれて暮していると「今の最新のものがコレだから、
さぞかし昔のものや古くなったものは、もっとひどいのだろう」というふうに錯覚して
考えてしまいがちですが、このリズムボックスのように、古くなっても、丈夫で壊れにくく、
頑丈で長持ちし、一生使えるかもしれないような「よくできた昔のモノ」にふれると、
そうではなく、ひどいのは、むしろ今のものとそのものづくりの方なのだということを
思い出させてくれます。もし「電気安全法」という名のアパルトヘイトやホロコースト
によって、こうした「よくできたモノ」がマーケットやショップから追いはらわれ、一部の
愛好者の閉じたサークルの中だけでひっそりとやりとりされるようになってしまえば、
そうしたコモンズとのコンタクトの機会も失われるでしょう。そうなると「新しいものが
よくて、古いものはだめだ」という思いこみと偏見だけが残り、そう思いこませたい
と考えている誰かの、まさに思惑どおりになってしまい、いつまでたっても、
リサイクルも、エコロジーも、ロハスも、スローライフも、ただのユートピア的
空念仏でありつづけるでしょう。というわけで、最後にもう一度くりかえすと、
昔の電化製品はたしかにローテクだけど、プロダクツとしては完成度が高い。
それにくらべ、今の電化製品は機能的にはハイテクだけど、プロダクツとしても、
テクノロジーとしても、まだ未完成なままである。あぶないのは、はたして、
どっちなのだろうかと、誰が想わざる。手ブレしないカメラとか、鍵盤が光る
キーボードとか、高解像度すぎて目のやり場に困るようなテレビとか、もう、
そういうものはいらないので、過去の家電製品をお払い箱にしないですむ
ような電源ボックスやバッテリー装置を、たのむから、つ・く・っ・て・ほしい
と、誰が想わざる。

▼温故&痴新ということ_d0017381_1825584.jpg
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[追記] 世間ではよく「昔はよかった」などと過去を美化するようになるのは
「齢をとった証拠だ」などといわれます。たしかにその通りだ思います。でも、
「それが、どうした、齢をとってナニがわるい、上等だ、望むところだ」とイル
コモンズは、そんなふうに考えてますので、これからますます「クソオヤジ」
になって「齢をとった証拠」をつきつけるべく「昔のモノはよかった」という話を
書いてゆこうと思ってます。しつこくて、人にけむたがられようが、若者に
嫌われようが、異性にもてまいが、それもまたいいなと、そう思いはじめて
イルところですから。
by illcommonz | 2006-02-22 19:09
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