はじめに、ふた、ありき
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食べることはたのしいことですが、実はいつもたのしいわけではなく、
「たのしい食事」という、この私たちにとって、ごくあたりまえの感覚は、 どうも割と最近の時代になってから(大正~昭和期)、はじめはまづ、 都市部で発明され、それが流行し、やがてひろく一般化していった、 「あたらしい感覚」ではないのかしらんと、うすらぼんやりと私はそう うたがっています。つまり世のはじまりからそうであったのではなく、 それには、はじまりの日の日づけこそがないが、歴史のある時点に 「起源」をもった、「モダンな大衆文化」ではないのかと、そういう気が してならないのです。たとへば、ある有名な小説の次の一節には、 私たちが忘れてしまった、そして、忘れたことさえ忘れてしまった それ以前の、「たべるということのうすぐらさ」の感覚が、保存されて いるのように、私にはそう思へてならないのです。 「子供の頃の自分にとって、最も苦痛な時刻は、実に、自分の家の食事の時間でした。 自分の田舎の家では、十人くらいの家族全部、めいめいのお膳を二列に向い合せに 並べて、末っ子の自分は、もちろん一ばん下の座でしたが、その食事の部屋は薄暗く、 昼ごはんの時など、十幾人の家族が、ただ黙々としてめしを食っている有様には、 自分はいつも肌寒い思いをしました。それに田舎の昔気質の家でしたので、おかずも、 たいていきまっていて、めずらしいもの、豪華なもの、そんなものは望むべくもなかっ たので、いよいよ自分は食事の時刻を恐怖しました。自分はその薄暗い部屋の末席に、 寒さにがたがた震える思いで口にごはんを少量ずつ運び、押し込み、人間は、どうして 一日に三度々々ごはんを食べるのだろう、実にみな厳粛な顔をして食べている、これも 一種の儀式のようなもので、家族が日に三度々々、時刻をきめて薄暗い一部屋に集り、 お膳を順序正しく並べ、食べたくなくても無言でごはんを噛みながら、うつむき、家中に うごめいている霊たちに祈るためのものかも知れないとさえ考えた事があるくらいでした。」 さて、あなたは、きょう、なにをころして、食べますか。 (以上、イルコモンズ「ラジオ文芸館」2000年3月放送分より) ------------------------------------------------------------------------------------ 【放送用音源】 イルコモンズ作 組曲「食事の刻」(あさ・ひる・ばん・おやしょく) (2000年 5分39秒 mp3) *歴史的録音のため一部お聞き苦しいところがありますが、マスター音源に起因する ノイズですので、ご了承ください。
by illcommonz
| 2006-09-09 12:53
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