
これまで日本では、そして、
たぶん、これからも日本では、
永久未公開作品になるはずの
ジョージ・クッチャーの
インディペンデント・アート・
ポルノ・ムービーの名作
「Hold Me While I'm Naked」
(1966年)が、YouTubeで
みれます(YouTubeって
ほんとにすごいね)。
自由奔放な音楽の使い方と
カットの激しいカメラワークが
絶品で、お色気も十分です。
もし、ダニエル・ジョンストンが映画を撮ったら、きっとこうなる、という感じの映画です。
一見「モンド映画」のようですが、さにあらず、正真正銘のアート&ポルノムービーです。
映画「エゴン・シーレ」で、マチュー・カリエール演じるシーレが、裁判の席で裁判長に
むかって、「思春期のあの身を切り裂くような性の懊悩を忘れてしまったような人間は、
地獄の底に落ちてしまえばよいのだ」と悪態をつく場面がありましたが、クッチャーは、
シーレと同様、その記憶を決して手放すことがなかった、ということがわかる映画です。
後半のゆれるアンテナの映像と音楽はどこか小津安二郎みたいで、そこから脈絡の
ないお色気シーンの連発でフィナーレを迎え、静かに幕をおろした後のエピローグは、
なんだか妙にしみじみとします(*後半が特におすすめです。映画への愛を感じます)。

▼「Hold Me While I'm Naked」(前篇)
http://www.youtube.com/watch?v=uud9YSV7lcM
▼「Hold Me While I'm Naked」(後篇)
http://www.youtube.com/watch?v=ps-TmIAlYYM
(1966年 15分 カラー *ノーカット・無修正版)
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70年代から80年代にかけて
モーテルから見える風景や
天候を撮った一連の作品
(
"Wild Night in El Reno" "Weather Diary")も
いいですよ。
たえず変わる天気とその風景の変化を表象した、さまよう映画、文字どおりの
ロードサイド・お天気ムービーです。

それから、どの映画もタイトル・ロールのアートワークがめざましくすばらしい。
「美術手帖」も、いまや誰もが知ってるヘンリー・ダーガの特集なんてやらないで、
クッチャーとかをフューチャーしたらいいのに、と思いますね。
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[追記] 参考までに、この作品が撮られた1965年、米国ではいわゆる「ポルノ狩り法案」
(ソドミー法)が成立したという歴史的背景があるので、そういう意味ではアンダーグランド・
レジスタンスの映画でもあって、この作品に流れるメランコリーはそのへんに由来してる
のかもしれません。

▼米国政府制作のポルノ撲滅キャンペーン映画
Anti-Pornography Propaganda film (1965)
こういうものまでYouTubeにあるのだから、
ホント勉強になります。