はじめに、ふた、ありき
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こないだこのブログでアイヒャーの文章を紹介した時ふと思い出して、2000年にグラフィック
デザイナーたちが共同で出したマニフェスト「First Things First」もそのうち紹介しますと 書いていたら、今度、下北沢でやることなってるイルコモンズ・アカデミーの共謀者である 気流舎の加藤さんがテキストを送ってくれましたので紹介します。以前、雑誌「アイデア」の 「エミグレ」特集号に掲載されてた翻訳をお手本に自分で訳してみようと思って、すこし はじめていたのですが、送ってもらったテキストの方がずっとよかったので、手を加えず、 そのまま転載します。ちなみに加藤さんは、2000年にこの宣言に署名して、当時いた デザイン会社を辞めたそうです。もしそうしてなったら、気流舎はなかったかもしれない と考えると英断だったかも。ということで、デザイナーの方もそうでない方も、ぜひ一読を。 ▼「本当に大切なことを一番に」 声明文 この声明文に名を連ねる私たちは、グラフィック・デザイナー、アートディレクター、ビジュアル・コミュニケーターである。私たちが育ってきたこれまでの社会では、広告の仕事が、自分たちの才能を活かし、高収入をもたらし、効果も見えやすい理想的な職業のナンバー・ワンであるかのように思わされてきた。多くのデザイン関係の教師や指導的な立場の者たちも、そう信じて指導にあたってきたし、業界でも広告関係には高い報酬が支払われ、さらにおびただしい量の書籍や出版物により、この「広告至上主義」は動かしがたい事実として定着してきた。 デザイナーたちはこれに踊らされ、犬用のビスケットやデザイナー・ブランドのコーヒー、ダイヤモンド、洗剤、ヘアージェル、煙草、クレジットカード、スニーカー、痩身クリーム、ライト・ビール、RV車などの販売促進のために、自らの技術と想像力を使ってきた。コマーシャルの仕事をこなしていれば食いはぐれることはなかったが、今や多くのグラフィック・デザイナーたちが、ほぼすべての時間をコマーシャル制作に注ぎ込むまでに成り下がってしまった。それにつれて、人々はデザインというものを、コマーシャルとしてしか感じなくなった。デザイナーたちのプロとしての時間とエネルギーが、本来生活に必要とされていないものの需要を生み出すために、消耗されているのである。 私たちはこんなデザインのあり方に平気でいることはできなくなってきた。広告やマーケティング、新ブランド開発に主に取り組んでいるデザイナーは、消費者の話し方、考え方、感じ方、反応の仕方や関係の持ち方そのものまでがコマーシャル・メッセージによって変えられていくような、そんな精神的環境を作り出し、積極的に支持していることになる。すなわち私たちは、人々の対話を減らし、蝕んでいくように誘導しているに他ならない。 私たちの問題解決の力を活かす、もっと有益な活動が少なからずある。環境、社会、文化における未だかつてない危機的状況に、今こそ、私たちは注意を向けなければならない。文化的対立を調和し、社会的キャンペーン活動、書籍や雑誌の出版、展示会、教材やテレビ番組、映画、チャリティー活動など、情報の加工が求められるさまざまなプロジェクトに、私たちの専門的知識を活かし協力することが必要とされている。 私たちは、従来の価値観を見直し、より有益で持続可能かつ民主的なコミュニケーションのあり方を志向し、モノの生産から脱却して、新しい意義づけを模索し創造していくことを目指そうと提案する。人々が互いの考えをぶつけ合う機会がだんだん減ってきている。もっと機会を増やしていかねばならない。消費主義はあまりに肥大しすぎている。これに対抗する新たな視点を、視角表現やデザインを活用し、提示していかなくてはならない。 1964年に、22名のビジュアル・コミュニケーターたちが、自分たちの才能をもっと意味あることに使おうという声明を出した。商業主義のグローバル化が爆発的に広がる中、このメッセージの緊急性は高まっている。私たちは、この声明が実現しないままさらに数十年が過ぎ去ることを許さないために、ここに新たに発表するものである。 (以下署名) ------------------------------------------------------------------------------- ちなみに、この共同声明は改訂版で、1963年に英国のデザイナーのケン・ガーランドが 起草し、翌年、22人のデザイナーたちの連名で発表されたものを、「アドバスターズ」が 1999年に雑誌に再掲載したことがきっかけとなって、2000年に改訂されたもので、この 2000年版にはジョナサン・バーンブロックを筆頭に、「COLORS」のアート・ディレクター ティボール・カルマンなど、いろんな国のデザイナーたちが名前を連ねています。日本の 総理大臣みたいに「日本人が自分で書いたものじゃないからダメだ」なんて、そういう了見 の狭いことは云わず、「どこの国の誰が書いたものでもいいものはいい」というおおらかで 柔軟な、というか、普通の発想で改訂されたもので、憲法だってそれでいいと思います。 ということで、この宣言に賛同する方は、このエントリーのコメント欄に署名をどうぞ。 もちろん署名したからといって、会社をやめる必要はありませんよ(笑)。
by illcommonz
| 2007-06-07 09:26
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