
寝て三日目にアフリカで暮らしてたころの夢をみた。となりの村で、
ある男がねずみ退治の毒を盛って実の兄弟を殺したときのこと。
夕暮れに、大きなムコネの樹の下にみんなが集まって話し合って
いる。この事件のことをみんなが話している。長老や大人たちは
口々にこう云っている。「これはおそろしいことだ、まったくひどい
ことだ」。真剣な表情でみんなそう云う。長老は杖で地面を打ち据え
ながら話す。杖が地面を打つたびに地面がビリビリふるえ、砂埃が
たつ。いつもは陽気な仕立屋の男も語気を荒げてこう云う。「兄弟を殺すなんて、
人でなしのすることだ」。こどもたちはじっとそれをきいている。陽がすっかり落ちて、
あたりがまっくらになっても、話は終わらない。暗闇のなかで怒声と非難が響く...
そういう夢だった。こんな夢をみたのは、「子が親の寝首をかく」というニュースを
みたせいだと思う。「人を殺せば世間が許さない、ましてや身内となれば、なおさら
のことである」。こういうあたりまえのことを、身近な人間たちのことばや感情を通じて、
身をもって知る場がなければ、こういう事件はこれからもつづくと思う。そう思うと、
せっかくたくさんねたのに、寝覚めがよくない。「心の闇」とかなんとかいうが、そんな
ことをいってもはじまらないと思う。それよりも、共同体社会は、こうした事件がおきた
とき、それにどう対応しているか、それを手本にして考えなおしたほうがよいのでは
ないかと思う。