
いま、六本木の国立新美術館で開催中の
「安齊重男の“私・写・録(パーソナルフォト
アーカイブス)”1970-2006」展を観てき
た友人から、展示写真の中にイルコモンズ
が2001年の横浜トリエンナーレに出展した
インスタレーションとイルコモンズの後ろ姿
を写した写真があったよ、と教えてもらいま
した。そういえば、たしかに撮影してもらった
記憶があるし、そのとき誰かから「安齊さん
に撮ってもらったら、作家として一人前だよ」
と云われた記憶があります。でも、同展の会期中に911の事件が起こり、(以下省略)で、
いろいろあったあげくに
作家を廃業したので、その写真のことはすっかり忘れてました。
まだ会期があるようなので、「作家になりそこねた廃業作家」のめずらしい記録写真として
みにゆこうかなと思います。ちなみに、そのインスタレーションはもう存在しませんが、
その素材に使った電子楽器や電気製品は、あの天下の悪法PSE法を生き延び、
イルコモンズの家で静かに余生を送っています。「この廃物たちがアートと呼ばれた
日があったのか」と思うと、ちょっと感慨深いので、その栄光の日の記録をみにゆこう
と思います。
[追記] 「安齊の写真は二つの側面を持っています。ひとつは、アーティストの個性を的確にとらえた芸術性の高いポートレイトとしての側面であり、日本人だけでなくイサム・ノグチやヨーゼフ・ボイスなど外国の著名なアーティストも被写体にした数々のポートレイトは、国内外で高い評価を受けています。いまひとつは、歴史的価値の高いアート・ドキュメントとしての側面です。30余年にわたり日本の美術の最前線と伴走して撮り続けたおびただしい数の写真には、展覧会の会期中しか存在しなかったインスタレーションや、今はない画廊、物故者などを写した現在では貴重な写真が数多く含まれています。この芸術性と記録性の二面性が、安齊重男の写真の大きな特色です」。(同展の解説文より)