片手で展覧会の仕事をしながら、もう片方の手で装幀を手がけてた、
これがようやく手をはなれた。「全巻同時刊行」なので、「全巻同時入稿」。
途中から並製が上製に変わったり、二色刷りが単色刷りになったりと、
体裁が二転三転するたび七転八倒させられたが、とにかくこれでおしまい。
事情があって装幀料は出ない。だが無償だからといって手をぬくわけには
いかない。報酬のある仕事なら、その額に見合った相応の仕事量や作業量
というのがあるが、無償の仕事にはそうした相場がない。どこまでやれば、
相応なのか判断がつかない。というより、すでに最初から相応ではないの
だから最後まで相応にはなりえない。デリダなら「アカウンタブルな無為の
活動は底なしの思考を喚起する」と云っただろうか、などということを考え
ることができたのが、イルコモンズのとりあえずの分け前か。