
「うさぎは、山あらし一家に、「豊かな」国々にいる「灰色には腹が立つよ、けど、デモなんか行っても、おもしろくないよ」という人たちのことを話してみることにしました。
「豊かな」国々のデモは、たいていは役所に許可を取ったものですが、「貧しい」国々で灰色と戦う人たちはデモの許可など取りません。許可をとらないことが怒りの表現の、大切な一部だと思っているのです。怒りを表現するのに許可など取るのは、怒りに誠実でないと思っているのです。そういうデモをする人たちは、銃やダイナマイトや、草を刈る1メートルほどの長さの刀を持っています。もちろん、そんな武器で、灰色と基地帝国が新しく組織した「特別予防警察」などに勝てるとは、本人たちも思ってはいません。
けれど、武器を持って、怒りを示しながら、誇りを示しながら、何十万人が、大声で歌を歌いながら、大通りを行くのです。「おもしろい」とか、「おもしろくない」とかいう話ではありません。
「許可を取らないとか、武器とか聞くと、「民主主義的に、合法的にやりましょう!非合法はいけません!」って言い出す人もいるよね。けでど、いわゆる「民主主義」とか「デモクラシア」の歴史は、根幹が非合法の運動の歴史なんだよね。基地帝国の建国も、絵本の国の何とか維新てのも、当時の法律から見たら、みんな非合法。人種差別に反対した人たちも、非合法。」
うさぎも、きららも、山あらしも、山あらしのお母さんも、「非合法、非合法」と言って、うなづいています。虹色の靴下をはいた双子の弟たちは、なにが可笑しいのか、くすくす笑ってます。
「しかし、おもしろくないデモかぁ」 山あらしは、興味をもったようでした。「行ってみたいもんだ。どんなデモか、見当もつかない。僕らのデモは正直言って、
「どうか、これ以上、おもしろいことになりませんように」と祈りながら歩いて、終わるとホッとする、って感じだから・・・」
(つづく)
小沢健二「うさぎ!」第6話より