
大学院生のころ、もぐりで聴講してた
鵜飼(哲)さんの講義で、
エルネスト・ルナンの
「国民とは何か」をよんだ。
ルナンはこう云ってる。
「国民とは日々の国民投票である」
パンチラインのある、いいフレーズだ。
時は流れ、セプテンバー・イレブンから
ちょうど一年目にあたる
2002年9月の、
展覧会で、こういう祭壇のような
インスタレーションをつくった。
タイトルは、
「レシートは資本主義への
日々の投票用紙である」
投票箱の上にある棒きれは十字架のようにもみえるし、WTCのようにもみえる。
どっちでもあるが、どっちでもない。その横の貼り紙には、日・独・英語表記で、
「誰も無実ではない」とそう書いてある。会期中、このインスタレーションの前で、
その年のGEISAIで遭ったばかりのKATHY にパフォーマンスをやってもらった。
KATHYの誰かが突然レシートの束を、ばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっと放り投げ、
それが頭の上からバラバラと灰のように降ってきた瞬間、「ここはどこだろう?」
と思うと同時に、ゾッとした。そして、この展覧会を最後に、美術家を廃業した。
当時のインタヴューをよむと「外に出たいから」とそう応えているが、当時はまだ
「外」とは、何の外で、どこのことなのか分かってなかったが、今はすこし分かる。
「外」とは「グローバリゼーションの外の世界」のことであり、現代美術の世界が
グローバリゼーションの波に飲みこまれる前に「もうひとつの世界」に出てみたく
なったのだと思う。
レシートは市場経済への日々の投票用紙であり、消費社会への賛成票であり、
グローバリゼーションのエンジンを加速させる燃料である。そして、この展覧会の
警告ポスターに書いたように
「その紙も使い方次第では凶器になる」。