はじめに、ふた、ありき
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▼サウンドデモ・サミット
「ダンシング・イン・ザ・ストリート サウンドデモだよ路上開放!!」 「路上に溢れる強烈なビート、人、人、人、人、人、楽器、旗、笑顔、叫び声、それを取り囲む機動隊、公安警察、逮捕、弾圧。ここ数年、全国の至る所で増えてきたサウンドデモの主催者・関係者を集め、貴重な映像やトークが爆発する!」 [日時] 2008年2月26日(火)18:30開場 19:30開演 [場所] 阿佐ヶ谷ネィキッド・ロフト [料金] ¥1,000(+1ドリンクから) http://www.loft-prj.co.jp/naked/schedule/naked.cgi [司会] 間宮賢(RLL) [出演] 松本哉(素人の乱)/毛利嘉孝(東京藝術大学准教授)/ ランキン・タクシー(レゲエ・ミュージシャン)/小田マサノリ(イルコモンズ)/ 二木信(ライター)/DJラマダーン(抵抗と反戦のフェスタ)ほか このサミットに出席することになりました。 ASC(Against Street Control)が主催した2004年の最後のデモからもう3年以上が経ち、当時のデモに対する「道路交通法」の適用期限はとっくに切れてるはずなので、知ってることは何でもすべて洗いざらい話します。渋谷のサウンドデモについては文献や資料もあるので、比較的手に入りやすいものを、いくつか紹介します。 ▼野田務+三田格+水越真紀編+ 吉住唯+工藤キキ編 『NO!!WAR』(河出書房新社 2003年) ▼磯部涼 「踊り続けろ!サウンドデモレポート」 『クィックジャパン』2003年51号 ▼野田務+三田格+水越真紀 「ダンス・トゥ・デモンストレーション」 『現代思想』2003年6月号 ▼イルコモンズ「見よ僕ら四人称複数イルコモンズの旗、改メ、殺すなの旗」 『現代思想』2003年6月号 ▼イルコモンズ「ぼくらの住むこの世界にはデモに出る理由があり、 犬は吠えるがデモは進む」『情況』2003年10月号 ▼イルコモンズ「春よこい~都市ノ民族誌(別称=昭和残響伝)」 『10+1』第34号 (INAX出版 2004年) ▼イルコモンズ「ザ・サウンドデモ二〇〇三」『情況』2004年3月別冊 ▼ECD+石黒景太+磯部涼+イルコモンズ+二木信「東京サウンドデモ会議」 『音の力・ストリート占拠編』(インパクト出版会 2005年) ▼毛利嘉孝『文化=政治』(月曜社 2003年) ▼ECD『いるべき場所』(メディア総合研究所 2007年) このなかで、あの時の現場の空気や緊張感、楽しさや興奮を最もリアルに伝えているのは次のECDの文章だと思う。 ..................................................................................... 「(二〇〇三年)三月十九日、イラク開戦の前日。仕事を終えた僕は開戦に抗議するひとびとが集まっているというアメリカ大使館に向った。しかし、アメリカ大使館周辺の大通りから大使館に向う道の入口はすべて機動隊によって封鎖されていて近づくことはできなかった。大通りからの舗道では右翼が星条旗を掲げて立っていた。その余りのバカバカしさと、普段自由に通行できるはずの通りが封鎖されていることへの怒りによって僕の中でカチリとスイッチが入る音がした。今回ばかりは傍観していられない。デモでも何でも参加してやる、そう心に決めたのだった。 ▼イルコモンズ「サウンドデモ・ポスター」(2003年) サウンドデモのことは三田さんから誘われて初めて知った。五月のサウンドデモには仕事の都合で参加することができなかったのだが、サウンドデモを主催するASC(Against Street Controlの略)のひとたちとはデモとは別件で顔を合わせることになる。 ASCのひとたちは並行して西荻窪の公園のトイレの外壁に「反戦」と落書きして逮捕された青年の支援活動も行っていた。その頃、僕が制作を進めていた新しいアルバムのジャケットをそのトイレの写真にしようと石黒が提案したのだ。僕はその提案を受け入れ、石黒の紹介で支援の中心になっていた矢部史郎さんに会うことになった。矢部さんの名前は僕も著書『無産階級真髄』を通じて知っていた。会ったのはその日、デモを終えたひとびとが集まった新宿の居酒屋だった。そこにいたひとびとの雰囲気に僕は不思議な懐かしさを感じた。矢部さんも『映画評論』の平沢剛さんも黒づくめの格好をしていた。それが吉祥寺マイナーにいたひとびとを思い出させたのだと思う。 それからいくつかのデモにサックスを持って小田マサノリさんのT.C.D.C.の一員として参加し、七月のサウンドデモのためのASCの会議にも参加するようになった。太鼓や一斗缶を乱打しながら「殺ーすーなー」と連呼するT.C.D.C.はデモの異物だった。 ▼[YouTube] T.C.D.C. 会議中、とても実現できそうにない突飛なアイデアを連発する石黒に運動慣れした活動家のひとたちがあきれながらも実現に向けて真剣に討議するそのやりとりは、とても有意義なことに思え、会議がある日は仕事が終わるのが待ち遠しかった。はじめてのサウンドデモで僕はこれでもかというくらい踊りまくった。この日ばかりはサックスも邪魔だった。スピーカーを積んだトラックのすぐうしろの一団は両側を取り囲んだ機動隊のジェラルミンの盾に体をぶつけながらモッシュした。ダムドの「ニート!ニート!ニート!」がかかっていた。歩道から一般人がデモの隊列に加わるのを防ぐために機動隊はデモの先回りをして、ガードレールの切れ目に並んだ。そのために炎天下いかにも重そうな完全装備をガチャガチャ鳴らしながら駆け足で先を急ぐ機動隊の姿は気の毒なほど諧謔だった。 デモの先頭がファイアー通りから坂をあがって渋谷公会堂の公園通りに出ようとする手前でのことだった。突然、僕の少し前の一団が将棋倒しのようにこちらになぎ倒された、同時に倒れたひとたちを踏みつけるように機動隊が向かってきた。「何するんだ!」「人殺し!」 叫びながら僕は夢中で倒れたひとの手を引っ張って立ち上がるのを助けた。「誰か逮捕されたぞ!」 情報を確かめるために走り回る活動家のメンバー、デモ隊は蜂の巣をつついたような騒ぎになった。やがてそれも落ち着き、一旦停止していた先頭のトラックは再び動き始めた。「言うこと聞くよな奴らじゃないぞ!」 誰かが叫んだその声はその場面にもっともふさわしい言葉だった。僕の耳にこびりつき頭の中で繰り返し鳴り響いた。 ▼イルコモンズ「サウンドデモ交通標識」(2003年) デモ終了後、不当逮捕に抗議するため、十数人で太鼓を鳴らしながら渋谷署に向かった。渋谷署の前の歩道に座り込みシュプレヒコールをあげる。次の日、逮捕者救援のための会議で矢部さんが言った。「石田さん、曲でも作ってくださいよ」「えー、できるなかー」突然のことにその場は答えをにごしてしまったけれど、家に帰るとすぐに歌詞を書き始めた。サビはすぐに決まった。逮捕の混乱のなかで聞いた「言うこと聞くよな奴らじゃないぞ」という声は忘れようもなかった。そうやって作られた新曲「言うこと聞くよな奴らじゃないぞ」はすぐにASCのウェブサイトにアップされた。 十月五日のサウンドデモでは、午前中から夕方のデモ出発までの時間、宮下公園でライブやDJ、ティーチインなどが繰り広げられた。出演したバンド、DJの中には、ストラグル・フォー・プライド、アブラハム・クロス、イルリメ、二階堂和美、ランキン・タクシー、クボタタケシというように自分の知り合いも多かった。デモに対してはこれでもかという人数で警備にあたる警察が、どういうわけか昼間の公園のイベントには介入しようとしなかった。この日のために用意した「言うこと~」のCD-R 200枚はデモ出発前には売り切れていた。(ECD『いるべき場所』(メディア総合研究所)より) ..................................................................................... 「高円寺一揆」についてもそうだったが、ECDのこの本は、ゼロ年代の東京のオルタナティヴな文化についての優れたエスノグラフィーだと思う。この本を出版したメディア総合研究所の編集者はとてもよい仕事をしたと思う。
by illcommonz
| 2008-02-12 00:26
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