
▼大友良英「誰のための法律なのか」
「どう考えても今の僕等の生きてる実感、現実にそぐわない法律がいくつかある。特にそれを感じるのは著作権に関する法律と、入国管理に関する法律だ。どちらにも共通しているのは、現実の変化のほうがあまりに早く、法律は現状に対し有効にはたらいているとは思えないということと、ひとつの国の中の基準だけで考えてはいけないとだ。だが、より本質的に共通してるのは、囲いを作って領土や利権を主張するための法律だという部分。著作権法はアーティストの作品を守る・・・なんて奇麗事は表向きで、実は、利権を企業が独占するための法律として実質的に機能してるのが現状ではないだろうか。どちらの法律も、僕らのように国境や人種、あるいは企業の利権とは別のところで、個人個人で活動している人間には障害になることのほうが多い。
アントニオ・ネグリの来日が中止になった、あるいは延期になった。来日直前にビザの発給を受けられなくなり,3月下旬に国内各地で予定されていたイベントが,中止かあるいはネグリ不在のままでの開催に追いこまれることになったそうだ。当初はビザなしで来日できることになっていた。それが急にビザを求められ・・・という経緯は、
http://www.negritokyo.orgに出ている。ビザを出さなかったのは日本政府なわけだけど、いったい誰が何を恐れて彼の来日を阻止したんだろう。オレには全然わからない。
楽器をかかえた僕らはあいかわらず自由に国境を越えて旅をしてる。幸い国境で止められることはめったにない。多分ステージで政治的な話をしないからだろう。まあ、そもそもそんなことを言えるだけの頭もないから誰にも恐れらずにすんでいるということだ。実にめでたい。
そんなわけで、無事国境を越え、さきほどパリに到着。あれだけオレを苦しめた、薬もたいして利かなかった今年の花粉症が、驚くくらいす~~っとひいていくのがわかる。どんな薬より、花粉から逃げるのが一番ってことなのか。逃げれる人間は幸いだ。でも逃げてばかりもいられない場合もある。ネグリの来日を邪魔することがいったいどんな国益になるというのだろうか。そういう偏狭さは、長い目で見て、なんの益ももたらさないと思うけどね。」
(
「パリ到着 誰のための法律なのか」「大友良英のJAMJAM日記」2008年3月22日より)
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いったい誰がネグリの来日を阻止したのか?そのこたえのひとつは
ここに。