
去年のクリスマスの「無買日」イベントのためにつくったポスターがめぐりめぐって、いま、京都のどこかの、ひなびた建物の靴箱の上に貼ってあるらしい。さっき
ホー娘。さんたちのサイトで偶然見つけた。いろんな靴がたくさんあるところをみると、大学の寮かオンボロアパートのようだ。ポスターづくりのよろこびは、こういう風景を見ることにある。贈与され、見返りを求めないものは、こうして遠くの見知らぬ土地を、気ままに、自由に、旅してゆく。はじっこがめくれあがって、ちょっとくたびれた感じがするところがいかにも旅をしている感じがしてよい。なによりも、しあわせそうに見える。ポスターにとってのしあわせとは、作り手の手を離れ、遠くの土地を旅をし、見知らぬ人たちの多くの目にふれ、見つめられることだ。音楽もまた然り。映画もまた然り。ハンス・アビングが云うように「贈与される芸術は決して買うことができない」。それはトロブリアンド諸島の貝の腕輪のように、マーケットを超えたところで、人と人を結びつけ、つなぎあわせ、ネットワークと協働をつくりだす。それは「公=パブリック」と「私=プライベート」のすきまに「共=コモン」の空間をつくり、コモンの空間をおしひろげてゆく。このポスターの上に何か貼りつけてくれてもよいし、落書きをしてくれてもよい。そうすればそうするほど、それはますますコモンになってゆく。このポスターに落書きをする者はみんなイルコモンズのともだちである。マーケットを超えたコモンの一部になりたい。いつもそう思ってる。