
[あらすじ]「お話してよ!」 あの911から50年を経た2051年9月11日の朝。21世紀生まれのお爺ちゃんが孫にせがまれて話し始める昔語り。「じゃあ、お月様のお話をしよう」 1969年、アポロ。人類初の有人月面探査船、着陸成功。強烈なファンタジーによって世界を制した米国。21世紀の到来。2001年9月11日。きたるもの。拡大してゆく戦火。増殖する幻。変わりゆく世界、そして日本。平和の国に、とうとう現れた、戦前世代たち。地下音楽界、ソウルミュージックの再興と、進化。さりゆくもの。消えてゆくレコード、魔法の輪っか。敗北する音楽家たち。沈黙。愛の日々。「お爺ちゃん、もっとお話してよ!」 日の終わりに待ち受けるものは?」
▼[YouTube] 七尾旅人「911ファンタジア」イントロダクション・ムービー
http://jp.youtube.com/watch?v=awnUrCmkFNA
「うつろ・・・ ワールド・トレード・センタービルは崩落し、何千人もの人びとが命をおとした。お~お~きなうつろがあいてしまった。そのうつろをアメリカはグランド・ゼロとよんだ。あれはほんの一例にすぎない。ほんとうのところ、それどころではなかった。アメリカはすこしやりすぎた。中東の人たちはずいぶん長い時間、耐えてきたが、なかには我慢しきれない者もいる。かつて米国が炎をそそぎ、燃やしつくそうとした場所から、ほんのすこしだけ、火の粉が、火の粉がまいもどってきた。どのような力をもって、どのような高い壁を築こうと、やはり、空はつながっていた。それは、まいもどってきたのだ。アメリカはおどろき、生まれてはじめてパニックにおちいった。今日から数えてちょうど50年前の9月11日。むかしむかし、21世紀のはじまり、二〇〇一年の話じゃ。それから1ヶ月後、中東の飢えたこどもたちの真上に爆弾がそそぎはじめる。まったく関係のない場所に、盛大な報復がはじまった。奇妙な戦争のはじまりじゃった。そこでの主役は、兵士でも兵器でもなく、国でもなく民たちでもない。まぼろしじゃった。まぼろしが世界をおおっていた・・・」
今日はこれを聞きなおした。何度きいても引きこまれてしまう。途中でやめられなくなる。
つづきをききたくなる。物語にはやはり力がある。