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いる・こもんず 【普通名詞】 01| ありふれて変なもの 02| 扱いにこまる共有物 03| 分けても減らぬもの 04| 存在とは常に複数で他と共にあり、狂えば狂うほど調子がよくなる
はじめに、ふた、ありき

イルコモンズ編
見よ ぼくら
四人称複数
イルコモンズの旗
(Amazon.comで
大絶版廃刊中)
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▼アメリカ、アメリカ、アメリカ
▼アメリカ、アメリカ、アメリカ_d0017381_071976.jpg生まれてはじめての海外旅行は、アフリカだった。
1989年、当時の日本はバブル景気のどまんなか、
虚栄と飽食の時代、ドイツではベルリンの壁が倒れ、
グローバリゼーションがはじまったとされる年である。
それから約20年経って、はじめてアメリカに行った。
アメリカに行くまで、こんなに時間がかかったのには、
幾つか理由がある。まずひとつは、文化人類学とは、
欧米中心主義を批判し、相対化する学問だからで、
国際学会などの用事がない限り、アンソロポロジスト
は自らすすんでアメリカを旅しようとは思わない。もうひとつは、グローバリゼーションとは、いわば、欧米文化の新たな世界征服だからで、国際行動などの用事がない限り、オルターグローバリゼーションのアクティヴィストは自らすすんでアメリカを旅しようとは思わない。アンソロポロジストとアクティヴィストは少なからず「反米、嫌米」の傾向を持っている。また、政治意識の強いアーティストにも、アメリカ嫌いの傾向と表現がみられる。たとえば、ヨーゼフ・ボイス。

▼アメリカ、アメリカ、アメリカ_d0017381_0114236.jpg
1974年5月、ニューヨークのJFK空港に降り立ったボイスは、厚いフェルトの毛布に頭からすっぽりくるまれ、そのまま救急車でギャラリーまで搬送された。以後5日間の間、ボイスはギャラリーの檻の中にとじこもり、西洋文明による侵略によって「失われた」アメリカ先住民の文化において霊的重要性を持つコヨーテと共に過ごし、それ以外のアメリカはなにも見ず、誰とも話さず、何にもふれず、アメリカを去っていく、というパフォーマンス「私はアメリカが好き、アメリカも私が好き」をおこなった。
トリプルA、すなわち、アンソロポロジスト=アクティヴィスト=アーティストとしての、こうした事情もあって、これまでアメリカに行きそびれていたのだが、実をいえば、これまで「反米」であったことは一度もない。9.11の後ですらそうで、9.11の一年後にやった展示「去年、トリエンナーレで」は、バロウズのアメリカ、ヴォネガットのアメリカ、ニール・ヤングのアメリカ、チョムスキーのアメリカ、ヴェルベットアンダーグラウンドのアメリカ、ノーウェーブのアメリカ、ソニック・ユースのアメリカ、アンダーグラウンドヒップホップのアメリカを思い出し、「反米」と「反米政府」とを腑分けしようとするものでもあった。そう、反対しているのは、あくまで、米国政府の軍事政策と新自由主義政策、米国企業のゆきすぎた資本主義であって、アメリカの住民や文化ではない。それを再確認するためのものだった。そもそも国や国家などというものを単位にして、それを好きになったり嫌いになるという考えからしておかしなことだと思うし、そういう発想から戦争やジェノサイドがはじまる。


▼Simon & Garfunkel - America
They've all gone to look for America
All gone to look for America
All gone to look for America


▼B.Jayashree - America America
America, America, American War Paar Da
War, War, War, American War

最良のものと最悪のものとが同居するアメリカ。今回のニューヨーク行きは、これまでさまざまなかたちで影響を受けてきた「複数のアメリカ」をめぐる、その最初の旅だった。音楽や映画やアートももちろんだが、現地でじかにふれてみたかったのは、アメリカの「デモクシー」である。ただし、制度や権利として与えられているものとしてのそれではなく、ときどき見失ったり、奪いとられたりしながらも、絶えずそれを要求し、とりもどそうとする運動や表現の方である。わずか数日間の滞在だったが、いくらかその片鱗にふれることができたような気がする。これについては後日あらためて書きたいが、結果として、「また行きたい、次は西海岸に行きたい」と思いながら帰ってくることのできた旅だった。
by illcommonz | 2008-10-04 00:19
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