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いる・こもんず 【普通名詞】 01| ありふれて変なもの 02| 扱いにこまる共有物 03| 分けても減らぬもの 04| 存在とは常に複数で他と共にあり、狂えば狂うほど調子がよくなる
はじめに、ふた、ありき

イルコモンズ編
見よ ぼくら
四人称複数
イルコモンズの旗
(Amazon.comで
大絶版廃刊中)
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▼無力な武器としての豊かな休符
▼無力な武器としての豊かな休符_d0017381_2145159.jpg
「ENSEMBLES 09 休符だらけの音楽装置」展
展示1「without records」
大友良英+青山泰知+伊藤隆之/YCAM InterLab + 高田政義 + α
[日時] 2009年7月4日(日)-8月9日(日)13:00-20:00
[場所] Vacant(東京都渋谷区神宮前3-20-13)
[入場料] 500円


▼"without records" - YCAM Otomo Yoshihide / ENSEMBLES

「約100 台の古いポータブル・レコード・プレーヤーを用いた大規模なサウンド・インスタレーション《without records》を東京で初展示。また会場1階スペースは「ENSEMBLES 09」の映像や写真によるアーカイヴ展示や今後の情報をオンタイムに発信するなど、「休符だらけの音楽装置」展の情報発信基地となる。会期中、大友良英によるライヴ、関連イベントを開催予定。会期後、大友良英ドキュメンタリー映画「KIKOE」上映。」

 「鼓膜を直接揺らす音楽。スピーカーと鼓膜の間には空間はおろか、空気すらほとんど存在しない音楽再生装置。これ、誰もが普通に使ってる小さなプレイヤーとイヤフォンのことです。僕らは今現在そんな音楽と音楽装置に普通に囲まれて生きています。
まわりにあるはずの空間をないことにして、耳に心地よく直接響く音楽。でも、オレそんなものを作りたくて音楽をはじめたんじゃないんだけどなあ。2008年山口のYCAMでやった巨大展示「ENSEMBLES展」の根幹になるアイディアは、この大きなクエスチョンマークからはじまってます。
 自分以外の人間が沢山いるところに、わけがわからない音が鳴り響いて波紋を投げかける。わたしが十代のころに、人生が変わってしまうくらい音楽にとりつかれたその根っこにあるのはまさにこれです。フリージャズ、即興演奏、ノイズ、オルタナティヴ・・・わたしが大好きだった音楽は、みんなそんな音楽たちでした。それは単に音楽だけじゃなく、そこの場のもつオーラや現場の力、そしてそこに集まる人たちの引力の中で、渾然一体となって響くような、そんな類の魅力でした。
鼓膜と発音源の間になんの空間もない音楽のあり方ではなく、空間やノイズをもう一度とりもどすこと。自分一人の音楽ではなく、多くの人々の耳を、手を、体を通過する中で見えてくる音楽を今つくるとしたらどういうものになるのか。こうしてENSEMBLES展ははじまりました。

 2009年、ENSEMBLES展はこのテーマを抱えつつ街に出ます。こう書くと威勢がいいかもしれませんが、街に出るってことは、要は実体経済の荒波にさらされるってこと。僕等は夢だけを食って生きていけるわけではありません。世の中楽じゃない。それでもあえて街に出ます。リアルな空間の中で、さまざまなノイズにぶちあたりながら、複数の人々を巻き込みつつ、もしかしたらあなたも巻き込んで街に出ます。街に出て展示ともライヴともつかない、あるいはそのどっちでもあるような、名付けようもない音楽装置を複数の人々の手で作ります。それは実際の装置のときもあれば、目には見えないけれど音楽を生む仕掛けだったり、企画の方法だったりと、解釈はさまざまなものになるでしょう。

 場所は問いません。不況で空いたビル、廃校になった学校、仲間のやっているライヴハウスやカフェ、裏路地の小さなギャラリー・・・ありとあらゆるところを利用してENSEMBLESはさまざまな音楽装置を作ります。本当ならここは「我々は○○を作る!」としたほうが宣言としては威勢がいいところですが、あえて主語はENSEMBLES。ENSEMBLESが示すのは「僕ら」でもなければ、「みんな」や「我々」でもありません。ましてや「ENSEMBLES」という言葉を象徴的に担ぎ出したいわけでもありません。大切なのは具体的な個人名たちです。アーティスト、音楽家、技術者、企画者、運営スタッフ・・・さまざまな人たちの個々の集合体が生むあらたなアンサンブルが作品の原動力です。タイトルをENSEMBLEではなく複数形の ENSEMBLESにしたのは、そうした集合体や作品群が、単にひとつの出来事としてではなく、複数、複合的にさまざまな意味合いを持ちつつからみあい、時に同時多発的に、時にはゆるやかな時間の流れの中で、時には矛盾、相反するようなこともおこりつつ、重層的に展開する・・・そんなイメージからです。

 今回はそこにもうひとつキーワードとして「休符」という言葉を持ち出しました。現実社会と折り合いをつけねばならない大人の知恵としての休符。息を止めてかくれんぼをするような子供の感覚としての休符。だれも殺すことの出来ない無力な武器としての休符。誰でも入り込んだり逃げたりすることの出来る居場所を提供してくれる休符。豊かな響きを用意するための、あるいはやかましい現実を静寂に変えることの出来る休符。そして、なによりも「ちょっとまってよ」と言うことの出来る隙を与えてくれる休符。音楽の中に潜む「休符」の豊かな発想がENSEMBLESの発想とともに、2チャンネルのヘッドフォンで聴かれるだけになってしまった今現在の音楽のありかたの枠を大きくとびだして、ノイズだらけの現実の空間に響くことを願って。

 というわけで、無謀にもENSEMBLES第2ラウンドの始まりをここに宣言します。
 タイトルは『ENSEMBLES 09 休符だらけの音楽装置』。

 さしあたり2009年7月から11月にかけて、ささやかなものから、ちょっとした規模のものまで、ほとんど個人的な作品から、多くの人たちがからむ作品まで、さまざまな場所で、さまざまな形の新作や旧作の展示やライヴをなかば即興的に、時にはゲリラ的に展開します。企画そのものも固定したものではなく、状況にあわせてフレキシブルに変化しつつ、既成の美術館やホールでは出来ないようなものを展開する所存。さらに、この成果をもとに、来年も再来年も ENSEMBLESをどんどん展開してければ・・・なんてことも考え出しています。大変だけどきっと面白いことになりますよ。

 みなさま、いったいこの先どんなことが起こるか、どうかお楽しみに。ってか、だれよりもどんなことが起こるのかを楽しみにしてるのは、わたし自身かもしれません。

 2009年4月18日 大友良英

................................

「音楽は無力だからこそ美しい。それがどんなに過激な音でも武器みたいに人を殺せないからこそ美しい。パンクが駄目だったからこそ美しかったように。音楽がご立派である必要なんてない。」

と、かつてその音楽家はそう書いた。「リスニング・ポイントの爆心地~耳を鍛えよ!」(2001年)と題された、その文章が掲載されたのは「スタジオ・ボイス」誌だった。サウンドデモをたちあげたとき、この文章を何度もよみかえした記憶がある。あれから8年、ジャンルは違えど、時代は確実に「爆心地=ゼロ・ポイント」は「休符」と「アンサンブル」のほうに動いている。これはみのがせない。さっそく限定500枚DVDつきのチケット(1,000円)を予約した。
by illcommonz | 2009-07-10 02:29
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