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いる・こもんず 【普通名詞】 01| ありふれて変なもの 02| 扱いにこまる共有物 03| 分けても減らぬもの 04| 存在とは常に複数で他と共にあり、狂えば狂うほど調子がよくなる
はじめに、ふた、ありき

イルコモンズ編
見よ ぼくら
四人称複数
イルコモンズの旗
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▼ポーズ、リラックス、シンク。
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「おわったところからはじめよう」(マイケル・ムーア Twitter 2016年11月9日)

 マイケル・ムーアには、大統領選の結果ははじめからみえていたようだし、その展開は、ジョセフ・ヒースが二年前に書いていたとおりだった。

 「アメリカ右派は、昔からそれなりにクレイジーな連中をかばってきた。特に銃マニアや宗教的保守派をかばってきた。だが近年はそこに、ティーパーティー運動をはじめ、進化論も地球温暖化も信じないし、ほかの多くのことも疑ってかかる、なにからなにまで科学否定派までが加わった。アメリカ人がふと気づいたとき、その政治システムは、保守かリベラルかではなく、クレイジーか、クレイジーではないかに分かれていた。しかもクレイジーのほうが優勢にみえた。アメリカがどうもまずいことになっていると大衆が意識しだしたのは、コメディアンのスティーヴ・コルベアが「真実っぽさ」ということばを広めた年だった。このことばは、政治家が合理性や証拠、さらには事実にもとづいた議論よりも、むやみに感情やカンに訴えかけてきている現状を評したものだった。感情はいまや客観的真理に勝利したのだ。たとえば、2012年の共和党大統領予備選挙では、議論と論争がどんどん現実から遊離して、ほとんどこの世のものとは思えない様相を呈した。もちろん政治的に優位に立つためにウソをつくのは大昔からあることだ。変わったのは、かつて政治家はそれがバレるのを恐れていたこと。たとえ厳密には真実でなくても、せめて本当らしく聞こえることを思いつかないといけない。ところが、政治家はついに気づいてしまった。ひたすら同じことをくりかえしていけば、それが真実であろうがなかろうが、大衆は信じるようになるのだ。そのため多くの政治家は、真実を語るふりをすることすらやめてしまった。選挙戦は、人々の頭ではなく、心に訴えることで決するのだ。頭よりも胸のうちに訴えることは、ラジオのトークショーはもちろん、テレビの受けもいい。真実などというものはなく、あるのは真実っぽさばかりだ。しかしこの環境は、わたしたちが生み出したものだ。いまどきの選挙がむきだしの感情への訴えで決するものであるとして、それは私たちが下した決定の結果だということだ。この世界は私たちが築いてきたものであり、その責任を引き受けなければならない。そしてこれは変化を求めて然るべき世界である。正気をとりもどす。さて、どうやってそれに取り組むのか。」(ジョセフ・ヒース 2014年)

 正気をとりもどすこと。今回の選挙には間に合わなかったが、今からでもぜんぜん遅くはない。マイケルムーアがいうように、はじめるには、今が絶好のスタート地点だ。それは日本も同じ、世界も同じ。感情に流されず、一息ついて、よく考えてみる。

▼ポーズ、リラックス、シンク。_d0017381_10295668.jpg
 さしあたりまずは、イグレシアスのこのことばから学べることを、よく考えてみたい。

 「僕のDNAには敗北が染みついている。(中略) 左派の人間は概ねそうだろう。(中略)勝つためには、我々は左翼であることを宗教にするのをやめなければいけない。左翼とは、ピープルのツールであることだ。左翼はピープルにならなければならない。左翼は庶民に語りかけていない。ワーキングクラスの人々を異星人のように扱っている。為政者は僕たちがわけのわからない言葉を話す少数派のままでいることを望んでいるのだから、それでは彼らの思う壺だ。」(パブロ・イグレシアス)

ブレイディみかこ「勝てる左派」と「勝てない左派」より










# by illcommonz | 2016-11-15 10:30
▼米国大統領選挙の文化人類学 選挙と呪術
▼米国大統領選挙の文化人類学 選挙と呪術_d0017381_225349.jpg
▼「NHKニュースの呪い」

 人類学者としてアフリカでフィールドワークをしていたとき、現地の生活で学んだことのひとつは、いわゆる「呪術」や「まじない」は、選挙とサッカーのときに活発化するということだ。ただしこれはアフリカだけの話ではなく、全世界的な傾向で、実際、ワールドカップの年になると、21世紀のいまも、世界各地で呪術や祈祷が流行する。ワールドカップのたのしみは、そうした海外からのニュースをネットで拾い集めることだ。一方、全世界が注目した今回のアメリカ大統領選挙でも、そうしたニュースには事欠かなかった。以下、今週の大学の講義(「文化人類学B」「現代世界論概論」)の教材に使うために、目についたものをピックアップしてみた。

▼米国大統領選挙の文化人類学 選挙と呪術_d0017381_22531932.jpg
「トランプ氏の当選祈願するヒンズー至上主義団体」
 「インドのヒンズー至上主義団体が、超自然界の助けを借りて、米大統領選の共和党候補指名が確実となったドナルド・トランプ氏を大統領の座に就かせようとしている。インドの右翼政治組織「ヒンズー・セナ」のメンバー十数人が今週、聖火にささげ物を投げ込み、サンスクリット語で賛歌を唱(とな)えてトランプ氏の大統領当選を祈った。額に赤い印のついたトランプ氏の肖像写真の横にはヒンズー教のサルの神「ハヌマーン」の絵が置かれ、上に掲げられたポスターには「われわれはトランプを支持する」「イスラムのテロに対する人類の希望だ」と書かれていた。ヒンズー・セナのビシュヌ・グプタ総裁は「選挙でトランプ氏を勝たせてくれるよう神に願い、祈り続けている」と述べた。」(ウォールストリートジャーナル 2016年5月13日)

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「印ヒンズー教の聖地でクリントン氏勝利を祈願、米大統領選」
 「米大統領選を翌日に控えた7日、インド北部ウッタルプラデシュ州にあるヒンズー教の聖地バラナシで、米民主党の大統領候補ヒラリー・クリントン氏の勝利を願う祈りがささげられた。」(AFP通信 2016年11月8日)



「ペルーの霊媒師ら、トランプ氏の勝利を阻む儀式」
 「ペルーの首都リマのビーチで7日、シャーマン(霊媒者)らが、混迷を極める米大統領選で民主党候補ヒラリー・クリントン前国務長官と共和党候補ドナルド・トランプ氏のどちらかを選ぶ儀式を行った。シャーマンらは、トランプ氏が次期大統領に選ばれることのないよう、同氏に罰を与えるよう神に願った。」(AFP通信 2016年11月8日)

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「KKK、トランプ氏当選祝うパレード計画 共和党は非難」
 「米ノースカロライナ州の共和党支部は11日、白人至上主義団体「クー・クラックス・クラン(KKK)」が米大統領選に勝利したドナルド・トランプ氏を祝福するため同州内で予定しているパレード計画を非難する声明を発表した。KKKは組織の公式サイトで、パレードは来月3日に行うと宣言。ただ、実施場所などの詳細は明らかにしていない。KKKは過去にもトランプ氏への賛意を表明。今月初旬にも機関紙の一面で支持を示し、トランプ氏陣営が即座にこれを非難する事態ともなっていた。一方でトランプ氏は選挙戦で、白人至上主義者からの支持を明白に拒絶することを避ける言動をしばしば示してきた。」(CNN 2016年11月12日)

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「ドナルド・トランプの就任前に何かが起こる」ババ・バンガの不吉な予言
 「アメリカ大統領選で勝利を収めたドナルド・トランプ氏の大統領就任式は、2017年1月20日に予定されている。しかしこれまでアメリカの同時多発テロ事件や、ISIS(イスラム国)の誕生、2009年のオバマ大統領就任などの予言を的中させてきたブルガリア人預言者ババ・バンガさんが「オバマ氏はアメリカ最後の大統領になる」と不吉な予言をしていたようだ。ババ・バンガさんは12歳の時に竜巻に巻き込まれて宙に舞い、その後地面に叩きつけられたことで視力を失い、この時に予知力を身につけたという。16歳の時から予言を始めると「バルカンのノストラダムス」「ブルガリア政府の国家機密」とも呼ばれるようになり、85歳で亡くなるまで数々の予言を残した。その予言の的中率はなんと85%で、ロシア政府も彼女の予言を信頼していたと言われている。その彼女がアメリカの政治に関し「第44代大統領はアフリカ系アメリカ人である」との予言を残していた。しかし彼女の言葉はこれだけでは終わらない。
 「第44代大統領はアメリカ最後の大統領である。」
 「経済危機により第45代大統領就任は阻まれる。景気は不安定となり、アメリカ国内は北と南で衝突が起こるであろう。」
 何とも不吉な予言だ。ドナルド・トランプ氏の就任は来年の1月20日。これは何かの警告なのか?それまでに何が起こるのか?トランプ氏の勝利に対して各地で抗議デモが行われる中、反トランプ派の中にはひそかにこの予言が的中することを願っている者もいるという。」(テックインサイト 2016年11月14日)

 ちなみに、インドは、祈願だけではない。AIを使った予測を見事に的中させてみせた。

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「インド発のAI、トランプ勝利を10日前に予測」
 「大手マスコミや世論調査がヒラリー・クリントン氏有利を予想していたにもかかわらず、11月8日の米大統領選挙はドナルド・トランプ氏の勝利に終わった。だが、インドの新興企業が開発した人工知能(AI)が10日以上前にの結果を正確に予測していたとして、注目を集めている。米CNBCが10月28日に報じたニュースによると、インドの新興企業ジェニック・エーアイ(Genic.ai)が開発した「MogIA」は、グーグル、フェイスブック、ツイッター、ユーチューブといったプラットフォームから2000万以上のデータポイントを分析。両候補に関連したネットユーザーの投稿を検討し、トランプ氏勝利を予測したという。 実際、今回の共和党と民主党の各大統領選候補者を選ぶ予備選挙の結果を含め、大統領選関連の過去4回の選挙で、MogIAは結果を正確に予測していた。」(ニューズウィーク 2016年11月14日)

 かつて、SF作家のアーサー・C・クラークは、「成熟したテクノロジーは魔法と見分けがつかない」と述べたが、たしかに機械じかけの予測と予言は見分けがつかない。

 ちなみに「MogIA」のお告げは、選挙の10日前だったが、「シンプソンズ」は、今から16年も前に(!)、この日のことを予言していたのだから、すごい。このエピソードを書いたダン・グリーニーは、このエピソードについて、「最悪の時期を迎える前の合理的な終着点で、アメリカへの警告だった」とコメントしているという。なんだかよくわからないが、とにかく、すごい。


▼「シンプソンズ」(2000年 第25シーズン

 ほかに、大統領選といえば、アメリカのフォークロアであるこの先住民の呪いも忘れてはいけない。

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【テカムセの呪い】(てかむせののろい Tecumseh's curse)
 「テカムセの呪いは、第9代アメリカ合衆国大統領ウィリアム・H・ハリソンの肺炎による死去から始まるアメリカ合衆国大統領への一連の出来事の原因とされる呪い。この呪いは、部族の領土を白人に奪われ1811年にティピカヌーの戦いでウィリアム・ハリソンに殺されたインディアン部族、ショーニー族の酋長テカムセ (あるいは予言者であったテカムセの兄弟テンスクワタワ)によるものとされるという。その「呪い」は20年ごとに選ばれる大統領の死を呪ったものといわれる。いくつかの資料では、テカムセが死んだとき彼の母親が呪いをかけたとされるが、確固たる証拠はない。また一連の出来事が「インディアンの呪い」によるものとする明瞭な出所もない。いくつかのキリスト教団体は「呪い」を真剣に考え、1980年のレーガン大統領および2000年のブッシュ大統領が災厄から守られるように祈願した。1920年以来、同様の団体が同様の祈願を行っている。そのうちの一つ「アメリカの仲裁者」Intercessors for America は1980年の「戦争祈願」で呪いを破ったと信じている。(ウィキペディア)

 最後に、これも。

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「オノ・ヨーコ氏がトランプ氏勝利にメッセージ 「叫べ。壁に向かって」本当に叫ぶ」
 「外に出よう」オノ・ヨーコはきっとそう言っているのだろう。アーティストのオノ・ヨーコは11月11日、ドナルド・トランプがアメリカ合衆国の大統領選に勝利したとの報道を受け、公式見解を発表した。公式見解は以下の通り。

 親愛なる友へ
 ドナルド・トランプへの私の見解として、このメッセージをシェアしたいと思います
 愛をこめて、ヨーコ

 ヨーコは同日、 この投稿に合わせてInstagramにも次のようなメッセージを投稿した。

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 叫べ。
 1. 風に向かって
 2. 壁に向かって
 3. 空に向かって
 1961年 秋

 これは1961年に出版された彼女のアートブック「グレープフルーツ」に収められている「声の作品」のひとつで、いわゆるインストラクション・アートの作品なのだが、「芸術は呪術である」という岡本太郎の説が正しければ、これはもう立派な呪いのインストラクション(=手びき)である。上の原文にあるように、この「叫び」は "cry" ではなく、"scream" であり、実際にその声をきけばわかるとおり、それは、言語以前のプライマルな叫び、獣の雄叫びのような「叫び」であって、いわゆる「言霊」ではない。さっそくそのクラブミックスもつくられたが、ミックスしていないオリジナルの叫びのほうが、トランプに対する生理的嫌悪感と呪いが露骨に感じられていい。さすが、かつて「東洋の魔女」を呼ばれていただけのことはある。

 それはともかく、今回の選挙でわかったことのひとつは、どのメディアよりも、どの統計学者よりも、マイケル・ムーアの見識はあてになる、ということで、マイケル・ムーアは、現代アメリカの民衆の心を誰よりもよく理解している、優れた民俗学者だと思った。

--------------------------
[追記]
 呪術には、黒魔術だけでなく、白魔術もある。たとえば、エマ・ワトソンのこれは、白魔術だと思う。

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「エマ・ワトソン、選挙が終わったニューヨークの地下鉄に本を隠す」
 「女優のエマ・ワトソンが、地下鉄に本を隠している。11月8日に行われたアメリカ大統領選の後に彼女が最初にしたことは、ニューヨークの地下鉄に、アメリカの著名な女性作家、マヤ・アンジェロウの本を隠すことだった。「Mom & Me & Mom」は2013年に出版された本で、母親ヴィヴィアン・バクスターとの関係を書いている。時には嵐のように荒れ、長い間確執を抱えていた母娘は、最終的には和解した。母親と娘の関係や、黒人の家庭が描かれたこの本を、ワシントンポスト紙のレビューは「アンジェロウのトレードマークである、ユーモアのセンスと確固たる前向きな姿勢が書かれている」と評している。ニューヨークには、初の女性大統領誕生の夢が消えて、意気消沈する市民がたくさんいる。ワトソンが地下鉄に隠した本は今、そんなニューヨーク市民たちの心を癒しているかもしれない。」(ハフィントンポスト 2016年11月10日)

 さすが、ホグワーツ魔法魔術学校の出身で、ハリーポッターの同級生だけのことはある。魔法の使いかたをよく心得ている。俳優といえば、ロバート・デ・ニーロのこの演技もすばらしかった。まさに現代アメリカ英語における悪態の見本である。



 最後にエマワトソン演じるグレンジャーから、ひとこと。

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 大統領になったら、ちゃんと宿題をしなさいよ、トランプくん。
 魔法大臣ハーマイオニー・グレンジャー(「ハリー・ポッターと呪いの子」より)










# by illcommonz | 2016-11-14 23:42
▼ハレルヤ、レナード

▼レナード・コーエン「ハレルヤ」(2008年版)

 トム・ウェイツとレナード・コーエンとボブ・ディラン、このうち誰がいちばん最初に天に召されるのだろう、とかねがね思っていたが、レナード・コーエンだった。たぶん理由は、神をたたえる、こんなよい曲を書いていまったからだろう。あるいは、エリザベス・ギルバートが紹介していたトム・ウェイツのはなしがほんとうなら、そのせいかもしれない。

 「みなさんも経験があると思いますが、アイデアというのはどこからともな降りてくるんです。これにとり乱すことなく、正気をたもちながら、どう対処してらよいのでしょう。現代におけるその対処法の手本となるのは、ミュージシャンのトム・ウェイツです。数年前、彼と雑誌の取材で、この話をしました。彼の人生は、典型的な、苦悩する現代作家でした。彼は自分の手に負えない創作の衝動をコントロールしようと苦心していました。彼の内面から湧きあがる衝動をです。そんな彼も歳をとって、ずいぶん穏やかになりました。ところが、ある日、ロスの高速道路を走っていた時、すべてが一変しました。車を飛ばしていたら、突然、頭に曲の断片が聴こえてきたのです。それは、とらえがたく、もどかしいひらめきとして。これはたまりません。まさに待ち望んでいたすばらしい瞬間なのに、紙と鉛筆がないんです。テープレコーダーもありません。彼はあわてました。「いま、これを逃したら、俺は一生後悔するだろう。しかし俺にはムリだ。俺じゃダメだ」と思って、彼は車をとめ、思いがけない行動にでました。彼は空を見あげながら、こういったそうです。「なぁ、あんた、俺が運転してるのが分からないのかね。いまここで曲が書けるとでもいうのかね。もし曲を書かせたいんだったら出直してきてくれ、ちゃんと相手ができるときにな。そうでなきゃ、ほかをあたってくれ、たとえば、レナード・コーエンはどうかね?」(エリザベス・ギルバート)

 このときトム・ウェイツがうけとるはずだった天の思し召しを、コーエンがうけとってしまったせいで、順番がくりあがってしまい、先に天に召されてしまったのかもしれない。そういうものだ。

「レナード・コーエンさん死去 世界的シンガー」
「世界的な人気シンガー・ソングライターのレナード・コーエンさんが死去した。82歳だった。10日、コーエンさんの公式フェイスブックが発表した。死因は明らかにしていない。コーエンさんはカナダ生まれ。「ハレルヤ」や「さよならマリアンヌ」などの代表曲があり、渋いしゃがれ声で世界中のファンを魅了した。詩人・小説家としても知られる。自己の内面などを歌い上げ、「ノーベル文学賞にふさわしい歌詞を書くミュージシャン」と評価する声もある。」(2016年11月11日 朝日新聞)

 もしこの論評がただしいのなら、レナード・コーエンがとるはずだったかもしれないノーベル文学賞をとってしまったボブ・ディランのことが心配である。

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[追記1]
 レナード・コーエンの「ハレルヤ」は数えきれないくらい、たくさんカバーされていて、名演も多いのだが、カバーでは、フォーク・パルチザンの「瓶のなかの球体」に収録されてたイマイ・アキブのこのヴァージョンがすきだ。


▼イマイ・アキノブ&エミ・グランド「ハレルヤ」(LIVE音源)

 「ハレルヤ」というリフ以外の歌詞は、オリジナルとはまったく別ものだが、そこがいい。特に「はしたないことばが、まるで花のようだろう、うたは聖なるこわれもの」という一節がとてもいい。ちなみに、オリジナルの歌詞では、こんなふうに歌いはじめられる。

 「かつてダヴィデ王が神をよろこばせるのに使った聖なるコード進行があったと聞いている。でも、ほんとうは、音楽なんてどうでもいいんだろう、なぁ? まぁ、いいさ、ともかくそれは、こう進んでいく。4から5へ、そしてマイナーでさげて、メジャーであげる。途方にくれる王がいまハレルヤを書いている。ハレルヤ、ハレルヤ、ハレルヤと。」

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[追記2]



 「コーエンの死を経て間もない11月12日、コメディ番組「サタデーナイト・ライヴ」で、「ハレルヤ」が、また流れた。ジェフ・バックリーが割愛した最終ヴァースが、ここでは最も印象的だった。

ベストは尽くしたけれど
大したことはできなかった
感じることができないから
せめて触れようとした
真実はすべて語った
たぶらかすためにここに来たわけじゃない
すべては失敗に終わったけれど
歌の王の前に立って
いま口をついて出るのは
ハレルヤばかり

 ヒラリー・クリントンに扮したエミー賞受賞のコメディエンヌ、ケイト・マキノンは、不世出の詩人レナード・コーエンの死を悼むとともに、トランプとの対決で討ち死にしたヒラリーを、うっすら目に涙を浮かべながら弔ったのだった。」

 「曲が使われるのは嬉しいよ、もちろん。考えてみれば、一度はボツになったアルバムの作品だからね、いってみれば復讐を果たしたみたいな気持ちがないわけではない。でもついこないだ、『ハレルヤ』が劇中で流れる『ウォッチメン』っていう映画のユーザーレヴューを読んでいたら、あるユーザーが、『いい加減、テレビや映画で「ハレルヤ」を使うのに禁止令出してくんないかな』と書き込んでたんだ。まったく同感だね。いい曲だとは思う。けれどもみんなが歌いすぎだ。」(故レナード・コーエン)






# by illcommonz | 2016-11-11 13:49
▼[リクエスト曲] 「神よ、女王を守りたまえ」


You might have seen the demand by Conservative MP Andrew Rosindell that BBC One should play God Save the Queen at the end of the day's programming to mark our departure from the EU. Well, we're not BBC One and it's not quite the end of the day, but we're happy to oblige.

「EUからの離脱を記念して、BBC第一放送は、放送終了時に、イギリス国家「神よ女王を守りたまえ」を流すべきだというリクエストが、保守党の下院議員アンドリュー・ロジンデルからありました。私たちは、BBC第一放送でもありませんし、放送もまだ終わってはいませんが、はい、よろこんでそういたしましょう。」

といって流したのが、セックス・ピストルズの同名の曲だった、というニュースのニュース。

 ちなみに中学生のとき、この曲の「NO FUTURE FOR YOU」というフレーズの意味を調べて、「なるほど、これはすごいことばだ。」と感心して、いつか自分も使ってみようと思ったのをおぼえている。「F*** YOU」ということばを知ったのは、その後で、自分が最初覚えた英語の罵倒表現は「NO FUTURE FOR YOU」のほうだった。そのせいか、いまでも、「F*** YOU」や「GO TO HELL」よりも、「NO FUTURE FOR YOU」のほうがしっくりくるし、中指よりも「アハハハハ」というバカ笑いのほうが先にくる。そういうものだ。







# by illcommonz | 2016-11-08 23:34
▼トム・ヘイデン(1939-2016)

▼1999年 シアトルのWTO抗議行動でのトム・ヘイデンのスピーチ(日本語字幕つき)

▼米反戦運動家、トム・ヘイデンさんが死去
「トム・へイデンさん(米反戦運動家)が地元メディアによると、23日、米カリフォルニア州サンタモニカの病院で死去した。76歳。1939年、ミシガン州生まれ。60年代に公民権運動やベトナム戦争の反戦運動に関わった。68年にシカゴで開かれた民主党大会で反戦デモを行い、参加者が暴徒化したとして起訴された7人の1人で、「シカゴ・セブン」と呼ばれた。女優ジェーン・フォンダさんと結婚し、息子をもうけたがその後、離婚。92年にカリフォルニア州上院議員になり、第2次大戦中の日本による強制労働の補償問題に取り組んだ。その後もイラクやアフガニスタンの戦争に反対し続けた。15年に脳卒中で倒れ、闘病生活を送っていた。」(朝日新聞 2016年10月25日)


▼「ワン・アメリカン・ムービー」(トム・ヘイデンの出演シーンは14分目以後)

「ワン・アメリカン・ムービー」は、ジャン=リュック・ゴダールとD・A・ペネベイカーが共同監督作品として1968年に撮影を開始、ゴダールが完成を放棄したアメリカのドキュメンタリー映画。その後、1972年、ペネベイカーの手により『1PM』として完成、公開された。本作のメインは、詩人のリロイ・ジョーンズ、ブラックパンサー党のエルドリッジ・クレヴァー、当時ヴェトナム反戦の戦闘的活動家だったトム・ヘイデン、企業の弁護士ポーラ・マダーへのインタビューである。ヘイデンは、この撮影直後の同1968年8月末に、イリノイ州シカゴで行われた民主党全国大会にヴェトナム戦争反対のデモンストレーションを行ない、いわゆる「シカゴ・セブン」として逮捕される。まさにゴダールの予測通り、激動の時代が動く姿を本作でとらえたことになる。ヘイデンは、ゴダールが「ジガ・ヴェルトフ集団」名義で1972年に撮った『万事快調』にも出演したヘイデンの「シカゴ・セヴン」の事件はゴダールをインスパイアし、1970年、やはり「ジガ・ヴェルトフ集団」名義で『ウラジミールとローザ』を撮影することになる。(ウィキペディアより)
# by illcommonz | 2016-11-06 19:33